2005-06-26

Kiss Me

雨の中の希望

虹の始まる場所

個人的な事情

正義の不在

殺意に満ちた街

不安に踊る雑踏

国王の気まぐれ

愛しているなんて、死んでも言わない

めくるめく屈辱

荒野に沈む幻の月

制御不�
アイデンティティという名の罠

屯田兵の憂鬱

語りたがる人の群れの中を泳ぐ

勧善懲悪の安心感

どうかキスしてください

擬人化されたテクノロジー

2005-06-22

紫色の瞳

彼女はとても野性的だ。
獰猛な獣のような、しなやかな肢体に、サディスティックな雰囲気を纏っている。
君は、そんな彼女に支配されている。
彼女の瞳は、紫色だ。
そのカラーコンタクトの瞳に見つめられる度、君は自分の矮小さを自覚する。

君は今、彼女の前で跪いている。
地面に近い位置から見上げる彼女は、神々しい。
よく陽に焼けた褐色の肌は艶かしく、威圧的な脚が君の前に聳えている。
君は、彼女の奴隷だ。
彼女の命令は君にとって絶対であり、服従は権利であると同時に義務でもある。

彼女の脚は、踵の高い赤いハイヒールで完結している。
そのヒールの底が、君の頭に置かれた。
君は床に額を擦りつけるようにして平伏し、その感触を受け止める。
彼女は、足に力を込め、君を踏みにじる。
君は、されるがままだが、それは至福の瞬間でもある。
マゾヒストである君にとって、屈辱は快楽だ。
美しい支配者に踏まれて、君はこのうえない幸福を感じている。

彼女は、君の頭から足を下ろした。
そして、そのまましゃがむと、おもむろに君の顎に手を掛けて前を向かせる。
君は至近距離で紫色の瞳と対峙する。
その瞳には全く感情が滲んではいない。
それは、人間を見る目ではない。
彼女にとって、君は一匹の奴隷であり、人間ではない。
だからその瞳に何の感情も現れていないのは、至極当然のことだ。

濡れたように光る彼女の唇がほんの僅かに開いて、その隙間から真っ赤な舌の先が覗く。
彼女は、その爬虫類のような舌を蠢かせながら、少しだけ唇を舐めてみせる。
その官能的な動作に、君の緊張は一気に高まる。
君は吸い寄せられるように、その赤い舌の先端を見つめる。

やがて彼女は再び舌を唇の中に収めた。
そしていきなり、冷徹な眼で君を見据えたまま、強く君の頬を掌で張った。
乾いた音が室内に響く。
君は歯を食い縛ってその痺れるような衝撃に耐えた。
彼女は、続けざまに何発も連続して君の頬を張った。
見る間に君の両頬が、まるで猿の尻のように赤く腫れ上がっていく。

しかし依然として彼女の紫色の瞳には、何の感情も浮かんでいない。
まるで純度の高い宝石のような聡明な光をただ静かに湛えているだけだ。

2005-06-04

イン・ザ・ケージ

巨大な檻だ。
縦、横、高さ、それぞれ一辺が三メートルほどはある。
それはサーカス団が、象やライオンを入れておくために使っている檻のようだ。
君は今、その檻のほぼ中央に、一人で立っている。
黒い鉄の格子が天井の蛍光灯を浴びて艶やかに光っている。

君は、両手は背中に回されて手錠をかけられ、その手錠は両足首を縛った足枷に鎖で繋がっている。
衣服は何も身に着けていない。
全くの全裸だ。
剥き出しの性器は萎え、空気が冷えているため、君は小さく震えている。
繋がれているわけではないので、檻の中であれば自由に動き回ることはできるのだが、なぜか君は動かない。
いや、動けない。
床は板張りで、君と格子の影だけが重なり合って淡く落ちている。

この檻は、一見サーカスのそれのようだが、細部まで目を配ると少々違うようだ。
天井には滑車がいくつかあって鎖が垂れているし、出入り口らしき扉の高さも、人間の背丈ほどしかない。
そして君から見て左側の面には、細長い頑丈な板を二枚組み合わせて作られた十字の磔台もある。
その板のそれぞれの先端には、短い鎖で繋がれた革のベルトがぶら下がっている。

檻が設置されているこの部屋は、がらんとしていて、広い。
そして君以外は誰もいない。
多分、倉庫か工場の跡地だろう。
なんとなく埃っぽいし、高い位置に、明かり取りらしい小窓がある。
しかし、その外は暗い。
夜だ。

檻から外へ出ることは不可能のようだ。
唯一の出入り口らしき扉には鍵がかけられていて、格子の外側に取り付けられた巨大な南京錠が、無言のまま君を威圧している。
人の気配は全くなく、空気はそよとも動いていない。
ただそこには檻があり、その中に君がいるだけだ。

そして、静寂。