2005-09-10

サイクリング・ロード

君は、穏やかな日曜日の午後、ひとりでよく自転車を走らせる。
とくに理由があるわけではない。
自宅から三キロほどのところに一級河川が流れていて、その土手の上の道が一部サイクリング・ロードとして整備されているから、君はたいてい、そこへ行く。
広い河川敷は公園になっていて、天気の良い小春日和の午後など、川面を渡って吹いてくる風が心地いい。

日曜日の午後の河川敷は、平和だ。
野球のグラウンドからは金属バットがボールを打つカキーンという音が快く響き、老人達はのんびりとゲートボールに興じ、子供達がダンボールの切れ端を使って草の斜面を滑り降りたりしている。
君はサングラスをかけて、ゆっくりと自転車を漕ぎながらそんな風景を見渡しつつ、サイクリング・ロードを走っていく。

君が乗っている赤いマウンテン・バイクはまだ新車同様で、購入して三ヶ月も経っていない。
あらゆる部分が、陽射しを浴びてキラキラと光っている。
君は道端に自転車を止め、バックパックを背中から下ろすと、その中から水のペットボトルを取り出した。
そしてサングラスを外して頭の上へ載せ、立ったまま水を飲む。
顎を上に向けると太陽の光が網膜を焼いた。
ペットボトルの中の水に光が屈折してプリズムを散らせる。
君は半分ほどを一息に飲み干すと、ペットボトルをバックパックに戻した。
そして草むらに腰を下ろして再びサングラスをかけ、サイクリング・ロードの先へ視線を走らせる。

前方の陽炎が立つ先に、やがてクラブ活動と思しき女子学生の集団が現れる。
体操着に身を包んだ彼女達は、掛け声を上げながら、健康的な肉体を弾ませてだんだん近づいてくる。
それを認めた瞬間、君の中に、明るい日曜の午後の雰囲気とは全く似合わない暗くて邪悪な衝動が生まれた。
君は、自制しようとしたが結局誘惑に負け、外に出したシャツの裾の下でそっとジーンズのジッパーを下ろすと、僅かに硬くなりつつあるペニスを引っ張り出してしまう。

数十秒後、彼女達が君の前を通過していった。
君は彼女達の若く健やかな太腿の躍動を眺めながら、シャツの裾の下で強くペニスを握った。
そしてサングラス越しにじっと凝視しながら、その手を忙しなく上下に動かす……。