2007-05-19

抱きしめて

全裸で背中に両手を回し、その手首をロープで縛られながら床に這いつくばっている君を、ボンデージに身を包んだスタイルのよい女王様が、冷然と見下ろしている。
君の手首を縛るロープが女王様の右手へと繋がっていて、女王様は立ったまま、芋虫のように床に伏せている君を嘲笑う。
しかし、声には出さない。
ただ、蔑みの視線を君の体に注ぎ、唇の端を僅かに歪ませているだけだ。
しかし、君はその気配をひしひしと感じるし、尻から背中、そして後頭部へと静かに移動していく視線を強く意識している。

それでも君は動けない。
全身に鞭の跡が走っていて、君はもう満身創痍だ。
息も上がってしまっているし、厳しい調教によって体力は限界に達している。
しかも、捻り上げられるように手首を背中で拘束されているので、その不自然な体勢のため、全身の筋が妙な具合に張ってしまっている。
君は、顔を横に向け、右の頬を冷たい床に押し付けながら、もうもがくこともやめて、ただ女王様の視線に晒されている。

手首のロープが深く食い込み、皮膚に擦れ、血が滲み始めている。
そして君の尻は、乗馬鞭で激しく打ち据えられたため、ミミズ腫れが無数走り、ところどころ皮膚が裂けて破れ、まるで猿のそれのように赤い。
背中に刻まれた鞭の跡もまるで前衛芸術のように華やかな模様を描いているが、尻の状態は凄惨を極めている。
今後数日はパンツを履くことさえ苦痛だろうし、椅子に座ることさえ辛いだろう。
そもそも、いまは伏せているために見えないが、吊るされて長く鋭い一本鞭で延々と打たれ続けたため、鞭の跡は首から下全体に走っていて、パンツだけではなく、シャツを着ることだって当分は痛みを伴うだろう。
当然、風呂も傷に沁みるから、地獄に違いない。

しかし、すべては君が望んだことなのだ。
誰に強制されたわけでもない。
君は君の意思で女王様に跪き、そして自ら進んで調教を求めたのだ。
君はマゾヒストで、女王様に、まるでサーカスの象のように調教されることに悦びを覚える歪んだ人間なのだ。
鞭の跡、そして痛みは、君の生の証だ。
君は痺れるように疼く痛みに、生命の跳躍を感じる。

女王様がロープを引っ張りつつ君に近づき、そして後頭部を硬いヒールの尖った底で踏み、更に爪先を乗せて全体重を掛けていく。
君は眉間に皺を寄せ、不器用に床に抱かれながら、嗚咽を漏らしてその痛みを受け止める。