2008-02-06

ピーチ

外で夕食を済まし、適度に疲れて帰宅した君は、仕事の服を脱いで着替え、テレビのスイッチを入れる。
最近購入したばかりの、50インチのフルHD液晶テレビが、ゆっくりと起動する。
君はソファに座り、テーブルに脚を投げ出す。
やがて画面に、水着の女が映し出される。
どんな番組かは知らない。

化粧で完璧に武装された美しい顔。
挑発的な肢体を包む、際どい白のビキニ。
デジタル・ハイビジョンの精彩な画質が、その布の質感、そして肌の質感を舐めるように象ってゆく。

女は笑っている。
多少の下品さは感じられるものの、蠱惑的な笑顔だ。
肉体が躍動している。
太っているわけではないが痩せてはいない、健康的で、しかし若干淫微さを漂わせる肉感的な体が、画面の中で弾んでいる。
その体の各部位を、カメラがズームアップしながら執拗に追跡する。
揺れる胸、突き出される尻、女が笑う。
白い肌が、眩し過ぎる照明によって透き通るように輝いている。
決して小さくはない尻のアップの残像が、君を捕らえて離さない。


一時間後、君はラブホテルの一室にいる。
素っ裸で、背中に回した両手を手錠で拘束され、首輪とリードを付けて床に跪きながら、背中を向けて立つボンデージ姿の女性の、革製のTバックのショーツに包まれた豊かな尻を見上げている。
リードの先は、女性の手の中にある。

白くて丸いピーチのような造形が、君の視界を占めている。
女性が振り返って君を見下ろし、リードをクイっと引っ張りながら、自らの尻を君の顔面のすぐ先へ突きつけて、嘲笑を浮かべる。

「何が欲しいの?」

鼻で笑いながら女性が訊く。
君は自由にならない両手をもどかしげに動かしながら、こたえる。

「お尻が欲しいです」

君は、その白くて柔らかそうで大きな尻に抱きつきたくてたまらないが、それは叶わない。
故に、激しく身悶えてしまう。

「やだ、何を盛ってるのよ、変態の分際で」

「すいません……」

しかし、君の視線は、女性の尻に釘付けだ。
手を伸ばせば、そして顔を後ほんの少し突き出せば、届きそうな距離にその尻はあるが、今の君には果てしなく遠い。

と。
唐突に女性がリードを緩め、次の瞬間、尻を君の顔面に載せて密着させた。
柔らかい感触が不意に君の顔に押し付けられ、君の鼻先と唇が、Tバックの細い布の部分によってピンポイントで被われる。
君の頬に、女性の白い尻の肌が吸着する。
そして、暖かい重みがのしかかる。

思わず君は腰を浮かし、飢えた獣と化しながら、貪欲に、そして恥も外聞もなく破廉恥に、思いっきり淫らに本性を晒け出して自らその尻の谷間に突進していく。
女性は悪戯っぽく、何度も尻を君の顔面で弾ませる。
君は、その躍動を追いかけるように、鼻腔を思いっきり開いて谷間の香気を吸い込み、双丘の重量感と温もりに酔い痴れながら、尖らせた舌をショーツの隙間に滑り込ませていく。
その姿には、もはや人間としての理性は一欠片も残されていない。
舌先にチリチリとした陰毛の感触が伝わり、柔らかい肉を辿り、君の意識は著しく狭窄して舌先の一点に集中する。
君は果敢に柔らかい亀裂へ、そして更に、その先で窄まっている莟へ、鼻息を荒げながら、一心不乱に舌を伸ばしていく。

そんな必死な君の髪を女性が無造作に掴んで揺すりながら、尚も尻を押し付け、そしてリードを極限まで短く持って完全に密着させ、高らかに笑う。
君はその感触に溺れながら、しかしやがて鼻と口を肉で覆われ、だんだん呼吸が苦しくなっていく。
尻を顔面に載せられたまま、君は悶え、体をよじる。
しかし逃げられない。
快楽が苦悶に転換され、視界が暗みに覆われて白い光が弾けながら、そして転落していく。

そんな君を見て、女性は更に楽しそうに笑う。
その嬌声と君のくぐもった呻きが卑猥に交錯しながら、それほど広くもない室内に響き渡っていく。