2008-03-05

終わらない夜

君は自分が大人の男であることを忘れ、いや、充分に承知のうえでそのプライドを放棄し、年甲斐もなく涙を流してしまった。
床に足は着いているものの、両手を上に伸ばしてその手首を縛られ、そのまま天井から吊るされている君の体には、無数の鞭の跡が縦横無尽に刻まれている。
それでも尚、鋭い鞭の先端が君の体を打ち据えていく。
その度に君は体を揺らし、背中を仰け反らせて叫び声を上げる。

薄暗い部屋だ。
しかし君はスポットライトの強い光の筒の中にいる。
そして薄闇の中に立つ美しい女王様は鞭を手に、薄ら笑いを浮かべている。

君は吊るされたまま、泣きじゃくってしゃくり上げながら、女王様に懇願する。

「どうか、お許しください……」

それは今にも消え入りそうな儚い声音だ。
女王様は、答えの代わりに更に鞭を振るって笑い声を響かせる。
君は唇を噛み締め、涙で滲む視界の中に女王様の姿を捉えて、荒い息を漏らしながら再度、許しを請う。

「女王様……どうか、どうかお許しください……」

しかし、そう言って哀願の眼で女王様を見つめる君の台詞に説得力はまるでない。
なぜなら、そんな風に許しを請いながら、君の性器は極限まで反り返っているからだ。

女王様が、鞭を止め、ゆっくりと君に近づく。
君は安堵の吐息を吐きながら、恐る恐る女王様を仰ぎ見る。
その探るような微力な視線を、女王様は冷徹な瞳で跳ね返す。
束の間の静寂が調教ルーム内に漂う。
君は息を詰め、ごくりと唾を飲み込む。

やがて女王様は君の前に立つと、顎に手をかけて至近距離から冷めた眼で瞳を覗き込み、そして勢いよくビンタを張る。
更に、君の顔に唾をペッと吐きかけ、一歩後ずさると、尖ったブーツの先で君の屹立したペニスを突き、一旦その足を床に下ろす。
しかし、次の瞬間、その足は思いっきり上方へと振り抜かれ、固いブーツの甲が君の陰嚢を下から抉るようにヒットする。

「うぎゃあ」

君は瞬間的に絶叫し、無様に飛び跳ねてしまう。
それを見て女王様は笑い、

「足を開いて立ちなさい」

と命じて、君が怖ず怖ずと従うと、再び陰嚢を蹴り上げる。
満身創痍の君は、恥ずかしげもなく叫び、まるで精肉工場のラインに吊るされた肉塊のように、体を身悶えさせながら不自由に揺れる。

手首で擦れるロープの痛み、鞭の跡の疼き、そして股間を痺れさす鈍痛。
君は、家畜以下の存在へと華々しく墜落していく。

しかし君の夜はまだ終わらない。