全裸で首輪だけを装着している君は床に四つん這いになった。
その尻を、女王様がブーツの甲で蹴る。
「ほら、返事は!」
「はい!」
君は、自分よりも遥か年下の女性に尻を蹴られ、どうしようもなく昂ってしまっている。
これから君は、飼い主であるこの女王様とともに、あるパーティに出かける。
それは、サディストの女性がそれぞれ奴隷を連れて参加する、親睦会のようなものだ。
君は、この女王様の専属奴隷になって三ヶ月目だが、このような宴に参加するのは今回が初めてだった。
いったい、どのようなことになるのか、全く想像がつかない。
事前に受けた説明によると、全ての女性が君のような奴隷を連れて参加するのだという。
もちろん、その奴隷は全員いまの君と同じような格好で、リードでコントロールされるらしい。
つまり、ペット同伴のパーティーといった趣らしい。
その場で、奴隷達は、それぞれの躾の成果を見極められる。
「芸をしてみろ」との命令が下されれば、もちろん披露しなければならない。
しかし君は、実はあまり芸には自信がない。
というより、他の奴隷と比べられるという経験自体が、これまでに一度もないから、不安でたまらないのだった。
その不安な様子が態度に出ていて、君は女王様に「シャキッとしなさい」と叱責され、尻を蹴られたのだった。
君は女王様の足元で四つん這いのまま、緊張のためにカラカラに渇いてしまっている喉を潤そうと、生唾を飲み込む。
聞いた話では、今回のパーティーには、五十人近い女性が参加するらしい。
ということは、それと同じ数だけの奴隷もいるということだ。
なかには多頭飼いしている女王様もいるということらしいから、奴隷の総数は五十人を軽く越える。
女王様が君を見下ろして言う。
「いい? 絶対に私に恥をかかせるんじゃないわよ。もしもそんなことになったら、死ぬほど拷問して捨てるからね」
君は緊張に体を強張らせながら声を張り上げてこたえる。
「はいっ!」
君は女王様にリードを引っ張られながらドアへと進む。
この格好のまま、君は女王様の自宅からハイヤーに乗り、パーティー会場であるホテルまで行かなければならない。
これはひとつの試練だった。
ハイヤーの運転手は普通の人だし、ホテルには、一般の人もいる。
もちろんハイヤーは地下駐車場へ滑り込んだ後、スイートルームのフロアへ直行する専用のエレベーターにすぐにそのまま乗り込むことになるが、それでも、夜風に全裸を晒して行くことには変わりない。
そして、どこで誰に見られるか、わかったものでもない。
しかし、君に拒否する権利はない。
なぜなら、君はひとりの人間ではなく、一匹の奴隷だからだ。
奴隷に、羞恥心やプライドは必要ない。
2005-02-22
2005-02-12
うたかた
春の雨
滲む刹那
ポストカードの青いインク
雪の白い記憶
血の赤い残像
痛みと快楽の板挟み
冷たい視線に縛られた午後の追想
叱責は鞭よりも強く
浴槽に浮かぶ灰色の雲
散らばる暁光
もうすぐ新しい一日が始まる
帆船の影
後悔
懺悔
真実の口
過去は清算できるだろうか
愛は
夢は
うたかたの気まぐれ
滲む刹那
ポストカードの青いインク
雪の白い記憶
血の赤い残像
痛みと快楽の板挟み
冷たい視線に縛られた午後の追想
叱責は鞭よりも強く
浴槽に浮かぶ灰色の雲
散らばる暁光
もうすぐ新しい一日が始まる
帆船の影
後悔
懺悔
真実の口
過去は清算できるだろうか
愛は
夢は
うたかたの気まぐれ
2005-02-03
監禁 #5
背中を突き上げる振動で君は眼を醒ました。
君は、数時間前と同じように、また車のバックシートに転がされていた。
ロープによる拘束は後ろで縛られた両手と両足首だけで、いつのまにか、かなり適当ではあったが衣服を身に付けている。
椅子に拘束されたまま射精して意識を失った後、解放されて、服を着せてもらえたのだろう、と君は想像した。
まだ頭の芯に、たぶんクロロフォルムだと思われる麻酔薬の感覚が残っていて、僅かに頭痛がした。
しかし、それは耐えられないほどではなかった。
君は横向きに転がったまま、深呼吸をした。
その息遣いに気付いた助手席の女性が、覗き込むように後部座席を見た。
眼が合う。
振り向いたのは、連行されるときにストッキングを口に押し込んだ女性だった。
ということは、運転しているのは誰だろう、と君は思った。
もしかしたらマスクを付けていた女性かとも思ったが、ちらりと見える項にかかった髪は茶色であるうえに短く、どうやら運転しているのも、先ほどと同じ女性のようだった。
君は目を瞬き、暗い車内で天井を見上げた。
いったい、どこへ向かっているのだろう。
脳裏に、先ほどの壮絶なビンタや射精の感覚が鮮やかに甦る。
そして、尿を飲まされたことを思い出し、それを思い出した瞬間、胃に不快感を覚えた。
そういえば、まだ口の中や腹の中がおかしい。
君はそう思い、ごくりと唾を飲み込んだ。
鼻腔の奥の方にアンモニア臭がこびりついているようで、なんともおかしな気分だった。
車が揺れるたびに戻しそうになってしまい、君は唇をきゅっと結んでそれを誤魔化した。
君は何も言わず、前の座席にいる女性達も何も言わなかった。
車内は、ほとんど無音だった。
カーステレオは鳴っておらず、低くロードノイズが断続的に響いているだけだ。
時々、車は赤信号で止まった。
振り仰ぐように覗いたスモークガラス越しに、街灯や電飾の看板などが見えた。
しかし、依然としてどこを走っていて、どこへ向かっているのか、君には全く見当がつかない。
どれくらい走ったのかわからないが、やがて車が道路から外れ、ロータリーのようなところを回りこんで止まった。
どこだろう、と訝しみながら君が縛られたままではあったが身構えていると、じきに助手席のドアが開き、そこにいた女性が後部座席のドアを外から開けた。
そして相変わらず無言のまま車内に上体を入れ、君の拘束を解いた。
まず足首を自由にし、続いて手を解いた。
君は何時間か振りにようやく体の自由取り戻して、体を起こした。
「ここは?」
そう君は訊いたが、女性は沈黙したままだった。
そしてその答えの代わりに、君の襟首を掴むと、強引に君の体を車内から引っ張り出した。
君はされるがままという感じで車外へ転がり出て、そのまま地面に尻餅をついた。
女性は、そんな君を立ったまま冷然と見下ろすと、再び助手席に乗り込んでドアを閉めた。
君は呆然となりながら、そのドアが閉まるのを見た。
そして次の瞬間、車はタイヤを鳴らして発進し、あっという間に視界から消えてしまった。
その場にひとり取り残された君は、両手を地面について脱力しながら、辺りを見回した。
するとそこは、普段、君が通勤のために使っている自宅近くのJRの駅前だった。
もう深夜なのか、駅前広場は静まり返り、少し離れた場所に客待ちのタクシーが数台停まっているだけで、ほとんど無人だった。
君はこの数時間のうちに自分の身に起こった出来事を頭の中で整理しようとしたが、混乱はまだ続いていて、どうやらまだそれは無理のようだった。
それでも、どうやら解放されたらしいことだけは確かのようだった。
いったい何だったのかさっぱりわからないが、安堵した次の瞬間、君は無意識のうちに、上着の内ポケットに入っている財布の中身を確かめていた。
幸い、中身は何も盗られてはいなかった。
携帯電話もズボンのポケットに入ったままだ。
ということは、問答無用で拉致され、裸で拘束され、破廉恥な辱めを受けただけで解放されたということか……。
そこまで考えて、君は、「いや」と首を振った。
いや、それだけではない。
あの部屋にはビデオカメラがあって、そのテープには辱めの一部始終が収められているはずだ。
記憶の奥底に、カメラのボティで点灯していたRecランプの赤い光点が鮮明に刻まれている。
しかし、と君は思う。
しかし、あの場所がどこかもわからないし、あの三人がどこの誰かもわからないのだから、到底回収は不可能だ。
そう思い、君は溜息をついた。
そしてそれから、いつまでもこうして地面にしゃがみこんでいるわけにもいかないので、よろよろと立ち上がった。
長い間、不自然な体勢で拘束されていたし、数分前まで車のバックシートに転がされていたから、立ち上がった瞬間、君は軽い眩暈を覚えてよろめいた。
それでもすぐに立ち直ってズボンの尻を手で払い、適当に着せられているだけの服装を整えた。
いったい何だったんだ……。
君は声に出して呟いた後、もう自宅まで歩いて帰る気力はどこにも残っていなかったので、客待ちをしているタクシーの列に向かってゆっくりと歩き出した。
そして歩きながら、まだ腫れが残っていると思われる頬を両手でそっと押さえた。
The end.
君は、数時間前と同じように、また車のバックシートに転がされていた。
ロープによる拘束は後ろで縛られた両手と両足首だけで、いつのまにか、かなり適当ではあったが衣服を身に付けている。
椅子に拘束されたまま射精して意識を失った後、解放されて、服を着せてもらえたのだろう、と君は想像した。
まだ頭の芯に、たぶんクロロフォルムだと思われる麻酔薬の感覚が残っていて、僅かに頭痛がした。
しかし、それは耐えられないほどではなかった。
君は横向きに転がったまま、深呼吸をした。
その息遣いに気付いた助手席の女性が、覗き込むように後部座席を見た。
眼が合う。
振り向いたのは、連行されるときにストッキングを口に押し込んだ女性だった。
ということは、運転しているのは誰だろう、と君は思った。
もしかしたらマスクを付けていた女性かとも思ったが、ちらりと見える項にかかった髪は茶色であるうえに短く、どうやら運転しているのも、先ほどと同じ女性のようだった。
君は目を瞬き、暗い車内で天井を見上げた。
いったい、どこへ向かっているのだろう。
脳裏に、先ほどの壮絶なビンタや射精の感覚が鮮やかに甦る。
そして、尿を飲まされたことを思い出し、それを思い出した瞬間、胃に不快感を覚えた。
そういえば、まだ口の中や腹の中がおかしい。
君はそう思い、ごくりと唾を飲み込んだ。
鼻腔の奥の方にアンモニア臭がこびりついているようで、なんともおかしな気分だった。
車が揺れるたびに戻しそうになってしまい、君は唇をきゅっと結んでそれを誤魔化した。
君は何も言わず、前の座席にいる女性達も何も言わなかった。
車内は、ほとんど無音だった。
カーステレオは鳴っておらず、低くロードノイズが断続的に響いているだけだ。
時々、車は赤信号で止まった。
振り仰ぐように覗いたスモークガラス越しに、街灯や電飾の看板などが見えた。
しかし、依然としてどこを走っていて、どこへ向かっているのか、君には全く見当がつかない。
どれくらい走ったのかわからないが、やがて車が道路から外れ、ロータリーのようなところを回りこんで止まった。
どこだろう、と訝しみながら君が縛られたままではあったが身構えていると、じきに助手席のドアが開き、そこにいた女性が後部座席のドアを外から開けた。
そして相変わらず無言のまま車内に上体を入れ、君の拘束を解いた。
まず足首を自由にし、続いて手を解いた。
君は何時間か振りにようやく体の自由取り戻して、体を起こした。
「ここは?」
そう君は訊いたが、女性は沈黙したままだった。
そしてその答えの代わりに、君の襟首を掴むと、強引に君の体を車内から引っ張り出した。
君はされるがままという感じで車外へ転がり出て、そのまま地面に尻餅をついた。
女性は、そんな君を立ったまま冷然と見下ろすと、再び助手席に乗り込んでドアを閉めた。
君は呆然となりながら、そのドアが閉まるのを見た。
そして次の瞬間、車はタイヤを鳴らして発進し、あっという間に視界から消えてしまった。
その場にひとり取り残された君は、両手を地面について脱力しながら、辺りを見回した。
するとそこは、普段、君が通勤のために使っている自宅近くのJRの駅前だった。
もう深夜なのか、駅前広場は静まり返り、少し離れた場所に客待ちのタクシーが数台停まっているだけで、ほとんど無人だった。
君はこの数時間のうちに自分の身に起こった出来事を頭の中で整理しようとしたが、混乱はまだ続いていて、どうやらまだそれは無理のようだった。
それでも、どうやら解放されたらしいことだけは確かのようだった。
いったい何だったのかさっぱりわからないが、安堵した次の瞬間、君は無意識のうちに、上着の内ポケットに入っている財布の中身を確かめていた。
幸い、中身は何も盗られてはいなかった。
携帯電話もズボンのポケットに入ったままだ。
ということは、問答無用で拉致され、裸で拘束され、破廉恥な辱めを受けただけで解放されたということか……。
そこまで考えて、君は、「いや」と首を振った。
いや、それだけではない。
あの部屋にはビデオカメラがあって、そのテープには辱めの一部始終が収められているはずだ。
記憶の奥底に、カメラのボティで点灯していたRecランプの赤い光点が鮮明に刻まれている。
しかし、と君は思う。
しかし、あの場所がどこかもわからないし、あの三人がどこの誰かもわからないのだから、到底回収は不可能だ。
そう思い、君は溜息をついた。
そしてそれから、いつまでもこうして地面にしゃがみこんでいるわけにもいかないので、よろよろと立ち上がった。
長い間、不自然な体勢で拘束されていたし、数分前まで車のバックシートに転がされていたから、立ち上がった瞬間、君は軽い眩暈を覚えてよろめいた。
それでもすぐに立ち直ってズボンの尻を手で払い、適当に着せられているだけの服装を整えた。
いったい何だったんだ……。
君は声に出して呟いた後、もう自宅まで歩いて帰る気力はどこにも残っていなかったので、客待ちをしているタクシーの列に向かってゆっくりと歩き出した。
そして歩きながら、まだ腫れが残っていると思われる頬を両手でそっと押さえた。
The end.
Subscribe to:
Posts (Atom)