2005-03-21

遠い昨日

昼下がり

川面を渡って暖かい風が吹く

春の息吹

土手に咲くタンポポ

立ち止まって深呼吸

宇宙のような青い空

飛行機雲の軌跡

昨夜の出来事

暗い部屋、冷たい視線

体に刻まれた傷は時間の証明

欲望は伸縮する

「今夜が最後」と彼女がいった

想い出は微か

秘めやかな吐息

揺らめく蝋燭の炎のよう

追憶の彼方には何があるのか

孤独、そして孤独

堤防に乗り捨てられた自転車

2005-03-05

Dog Life

君の日常は、半径三メートルの小さな世界でほぼ完結している。
つまりそれは、君を繋ぐ鎖の長さだ。
そしてたまには外界へ散歩に行くことができるが、しかしその際にもリードがはずされることはまずないから、やはり君の世界は半径三メートルだ。
なぜなら、そのリードの長さも、普段君が繋がれている鎖と同じ三メートルだからだ。

君は十七歳の女の子に飼われている。
高校二年生の彼女は、気まぐれに君を虐待しては、退屈を紛らわし、ストレスを発散している。
しかし、君に不満はない。
彼女はとてもキュートだし、何はともあれ君自身が生粋のマゾヒストだからだ。
君は彼女のペットとして生きていることに、とても満ち足りている。

君は普段から、気分屋の彼女による理不尽な苛めを散々受けている。
彼女はたいした理由も無く「ムカついた」といっては君を蹴り、殴り、君のアナルに様々なものをぶち込んで遊ぶ。
むろんその際、抵抗や反撃は一切認められていない。
そのため君は生傷が絶えない。
常に身体のどこかに痣や擦り傷を作っている。
二階のベランダから蹴り落とされて、足の骨を折ったこともある。
さすがにそこまでの怪我を負うと、病院へ行ってギプスを付けたり、一応の治療はしてもらえるが、虐待がなくなることはない。
ただ単に足にギプスを付けているというだけで、犬としての君の生活にたいした変化はない。

君にとってこの生活は過酷な試練の連続だが、嬉しいこともあるから抜け出せない。
君の飼い主はときどき、気が向くと、着用済みのソックスや下着を君に与える。
滅多にあることではないが、皆無ではない。
クラブなどで夜更かしし、酔っ払って帰宅したときなど、飼い主である彼女は上機嫌のままその酔いに任せて君の目の前でブーツを脱ぎ、ソックスを剥ぎ取るように脱いで君の鼻に押し付け、口に押し込み、二十四時間以上着用を続けた下着を君の頭に被せて遊ぶ。
そんなとき、君はこの生活の歓びを噛み締める。


学校から帰ってきた彼女が制服姿のまま、庭の片隅で繋がれている君の前へ来た。
君はきちんとお座りの姿勢をして彼女を迎え、地面に額を擦り付けるようにひれ伏す。
「おかえりなさいませ」
「ただいま」
今日の彼女は機嫌が良さそうだ。
「いい子にしてた?」
「はい」
君が頷きながらそうこたえると、彼女はおもむろにローファーを脱ぎ、紺色のハイソックスの足の裏を君の鼻に押し付けた。
「じゃ、ご褒美ね」
「ありがとうございます」
君は暖かい爪先から立ち昇る香気に昂りながら、その感触に半眼で陶酔する。
素晴らしい瞬間だ。
たちまち剥き出しのペニスが硬直を始める。
そんな君の反応に満足げな微笑を浮かべながら、彼女がいう。
「今日はおまえにお土産があるのよ。欲しい?」
君は足の裏に顔を押し付けたまま「はい」とこたえる。
すると彼女はいったん足を下ろし、鞄の中から紙袋を取り出した。
その紙袋の中には、小さな箱が入っていた。
さらにその箱を開けると、中身はレアチーズケーキだった。
彼女は、それを君に見せ、訊く。
「食べたい?」
「はい」
「じゃ、食べさせてあげる」
そういうと、彼女は近くにあった折りたたみ式の椅子を引き寄せて座り、君の餌のボウルの中にそのチーズケーキを投げ込んだ。
しかし、まだ食べることはできない。
君は犬なので、飼い主から「よし」という許可があるまで食べてはならないと躾けられている。
君がお座りしたまま待っていると、彼女は餌のボウルを持ち、中のチーズケーキに大量の唾を吐きかけた。
たちまちケーキに唾のコーティングが施されていく。
そして彼女はさらに、そのボウルを地面に置くと、立ち上がって、いきなりスカートをたくし上げて下着を下ろし、そのボウルを跨いでしゃがんだ。
君は、彼女の股間の茂みを凝視してしまう。
彼女のそれは、明るい日差しを浴びて艶やかに光っている。
やがて彼女は勢いよく放尿を開始した。
その金色の水流はチーズケーキを直撃し、その形状を破壊していった。

やがて水流が止まり、彼女はティッシュで無造作に股間を拭ってから下着を穿き、スカートの裾を下ろして再び椅子に座った。
ボウルの中のチーズケーキは、金色の液体に浸されて既にもう半壊している。
さらに彼女は、椅子に座ったまま片足だけ靴下を脱いだ。
そしてその生足をボウルの中に下ろし、チーズケーキを足の裏で捏ね繰り回す。
君は、半ば唖然としながら彼女の足の動きを凝視している。
彼女は足の指を動かしてチーズケーキを爪先に絡めた。
そして、その爪先をボウルから上げ、君の目の前に差し出す。
嘗てチーズケーキだった食べ物らしき物体が、彼女の足先を彩っている。
「ほら、おいしそうでしょ? お食べ」

彼女は楽しそうに笑っている。
君は「いただきます!」と叫んで、その爪先にしゃぶりつく。

2005-02-22

宴の前

全裸で首輪だけを装着している君は床に四つん這いになった。
その尻を、女王様がブーツの甲で蹴る。
「ほら、返事は!」
「はい!」
君は、自分よりも遥か年下の女性に尻を蹴られ、どうしようもなく昂ってしまっている。

これから君は、飼い主であるこの女王様とともに、あるパーティに出かける。
それは、サディストの女性がそれぞれ奴隷を連れて参加する、親睦会のようなものだ。
君は、この女王様の専属奴隷になって三ヶ月目だが、このような宴に参加するのは今回が初めてだった。
いったい、どのようなことになるのか、全く想像がつかない。
事前に受けた説明によると、全ての女性が君のような奴隷を連れて参加するのだという。
もちろん、その奴隷は全員いまの君と同じような格好で、リードでコントロールされるらしい。
つまり、ペット同伴のパーティーといった趣らしい。
その場で、奴隷達は、それぞれの躾の成果を見極められる。
「芸をしてみろ」との命令が下されれば、もちろん披露しなければならない。
しかし君は、実はあまり芸には自信がない。
というより、他の奴隷と比べられるという経験自体が、これまでに一度もないから、不安でたまらないのだった。
その不安な様子が態度に出ていて、君は女王様に「シャキッとしなさい」と叱責され、尻を蹴られたのだった。

君は女王様の足元で四つん這いのまま、緊張のためにカラカラに渇いてしまっている喉を潤そうと、生唾を飲み込む。
聞いた話では、今回のパーティーには、五十人近い女性が参加するらしい。
ということは、それと同じ数だけの奴隷もいるということだ。
なかには多頭飼いしている女王様もいるということらしいから、奴隷の総数は五十人を軽く越える。
女王様が君を見下ろして言う。
「いい? 絶対に私に恥をかかせるんじゃないわよ。もしもそんなことになったら、死ぬほど拷問して捨てるからね」
君は緊張に体を強張らせながら声を張り上げてこたえる。
「はいっ!」

君は女王様にリードを引っ張られながらドアへと進む。
この格好のまま、君は女王様の自宅からハイヤーに乗り、パーティー会場であるホテルまで行かなければならない。
これはひとつの試練だった。
ハイヤーの運転手は普通の人だし、ホテルには、一般の人もいる。
もちろんハイヤーは地下駐車場へ滑り込んだ後、スイートルームのフロアへ直行する専用のエレベーターにすぐにそのまま乗り込むことになるが、それでも、夜風に全裸を晒して行くことには変わりない。
そして、どこで誰に見られるか、わかったものでもない。
しかし、君に拒否する権利はない。
なぜなら、君はひとりの人間ではなく、一匹の奴隷だからだ。

奴隷に、羞恥心やプライドは必要ない。

2005-02-12

うたかた

春の雨

滲む刹那

ポストカードの青いインク

雪の白い記憶

血の赤い残像

痛みと快楽の板挟み

冷たい視線に縛られた午後の追想

叱責は鞭よりも強く

浴槽に浮かぶ灰色の雲

散らばる暁光

もうすぐ新しい一日が始まる

帆船の影

後悔

懺悔

真実の口

過去は清算できるだろうか

愛は

夢は

うたかたの気まぐれ

2005-02-03

監禁 #5

背中を突き上げる振動で君は眼を醒ました。
君は、数時間前と同じように、また車のバックシートに転がされていた。
ロープによる拘束は後ろで縛られた両手と両足首だけで、いつのまにか、かなり適当ではあったが衣服を身に付けている。
椅子に拘束されたまま射精して意識を失った後、解放されて、服を着せてもらえたのだろう、と君は想像した。

まだ頭の芯に、たぶんクロロフォルムだと思われる麻酔薬の感覚が残っていて、僅かに頭痛がした。
しかし、それは耐えられないほどではなかった。
君は横向きに転がったまま、深呼吸をした。
その息遣いに気付いた助手席の女性が、覗き込むように後部座席を見た。
眼が合う。
振り向いたのは、連行されるときにストッキングを口に押し込んだ女性だった。
ということは、運転しているのは誰だろう、と君は思った。
もしかしたらマスクを付けていた女性かとも思ったが、ちらりと見える項にかかった髪は茶色であるうえに短く、どうやら運転しているのも、先ほどと同じ女性のようだった。

君は目を瞬き、暗い車内で天井を見上げた。
いったい、どこへ向かっているのだろう。
脳裏に、先ほどの壮絶なビンタや射精の感覚が鮮やかに甦る。
そして、尿を飲まされたことを思い出し、それを思い出した瞬間、胃に不快感を覚えた。
そういえば、まだ口の中や腹の中がおかしい。
君はそう思い、ごくりと唾を飲み込んだ。
鼻腔の奥の方にアンモニア臭がこびりついているようで、なんともおかしな気分だった。
車が揺れるたびに戻しそうになってしまい、君は唇をきゅっと結んでそれを誤魔化した。

君は何も言わず、前の座席にいる女性達も何も言わなかった。
車内は、ほとんど無音だった。
カーステレオは鳴っておらず、低くロードノイズが断続的に響いているだけだ。

時々、車は赤信号で止まった。
振り仰ぐように覗いたスモークガラス越しに、街灯や電飾の看板などが見えた。
しかし、依然としてどこを走っていて、どこへ向かっているのか、君には全く見当がつかない。

どれくらい走ったのかわからないが、やがて車が道路から外れ、ロータリーのようなところを回りこんで止まった。
どこだろう、と訝しみながら君が縛られたままではあったが身構えていると、じきに助手席のドアが開き、そこにいた女性が後部座席のドアを外から開けた。
そして相変わらず無言のまま車内に上体を入れ、君の拘束を解いた。
まず足首を自由にし、続いて手を解いた。
君は何時間か振りにようやく体の自由取り戻して、体を起こした。
「ここは?」
そう君は訊いたが、女性は沈黙したままだった。
そしてその答えの代わりに、君の襟首を掴むと、強引に君の体を車内から引っ張り出した。
君はされるがままという感じで車外へ転がり出て、そのまま地面に尻餅をついた。
女性は、そんな君を立ったまま冷然と見下ろすと、再び助手席に乗り込んでドアを閉めた。

君は呆然となりながら、そのドアが閉まるのを見た。
そして次の瞬間、車はタイヤを鳴らして発進し、あっという間に視界から消えてしまった。
その場にひとり取り残された君は、両手を地面について脱力しながら、辺りを見回した。
するとそこは、普段、君が通勤のために使っている自宅近くのJRの駅前だった。

もう深夜なのか、駅前広場は静まり返り、少し離れた場所に客待ちのタクシーが数台停まっているだけで、ほとんど無人だった。
君はこの数時間のうちに自分の身に起こった出来事を頭の中で整理しようとしたが、混乱はまだ続いていて、どうやらまだそれは無理のようだった。
それでも、どうやら解放されたらしいことだけは確かのようだった。
いったい何だったのかさっぱりわからないが、安堵した次の瞬間、君は無意識のうちに、上着の内ポケットに入っている財布の中身を確かめていた。
幸い、中身は何も盗られてはいなかった。
携帯電話もズボンのポケットに入ったままだ。

ということは、問答無用で拉致され、裸で拘束され、破廉恥な辱めを受けただけで解放されたということか……。

そこまで考えて、君は、「いや」と首を振った。
いや、それだけではない。
あの部屋にはビデオカメラがあって、そのテープには辱めの一部始終が収められているはずだ。
記憶の奥底に、カメラのボティで点灯していたRecランプの赤い光点が鮮明に刻まれている。
しかし、と君は思う。
しかし、あの場所がどこかもわからないし、あの三人がどこの誰かもわからないのだから、到底回収は不可能だ。
そう思い、君は溜息をついた。
そしてそれから、いつまでもこうして地面にしゃがみこんでいるわけにもいかないので、よろよろと立ち上がった。
長い間、不自然な体勢で拘束されていたし、数分前まで車のバックシートに転がされていたから、立ち上がった瞬間、君は軽い眩暈を覚えてよろめいた。
それでもすぐに立ち直ってズボンの尻を手で払い、適当に着せられているだけの服装を整えた。

いったい何だったんだ……。

君は声に出して呟いた後、もう自宅まで歩いて帰る気力はどこにも残っていなかったので、客待ちをしているタクシーの列に向かってゆっくりと歩き出した。
そして歩きながら、まだ腫れが残っていると思われる頬を両手でそっと押さえた。

The end.

2005-01-29

監禁 #4

「喉が渇いたんでしょ? 遠慮せずに飲みなさい」
君の髪を掴んでいた女性が、さらに頭を引っ張り上げて、嘲笑を声音に含ませながら言った。
君は一瞬そのグラスから顔を背け、固く唇を結んで抵抗したが、マスクの女性に強烈なビンタを浴びせられて、その抵抗を断念した。
マスクの女性が君の唇の間にグラスの縁を捻じ込ませ、そのグラスを傾ける。
アンモニア臭が君の鼻を突き抜けた。
「ちゃんと口を開けろよ」
少し離れた場所に立っている女性が言い、髪を掴んでいる女性が、おもむろに君の顎を下からVの字に挟んで口を開かせた。
君は気持を決して、その金色の液体を口に含んだ。
そして飲み下す。

それは、これまでに味わったことのない種類の苦味だった。
君は、明らかに内臓の器官がその液体の進入を拒絶していることを意識しながら、しかし懸命に飲み続けた。
それでも、とぎとき咽てしまって、その液体を口から溢れさせてしまった。
「もったいないだろ、バカ」
腕を組んだまま、三人目の女性が言う。
君は「すみません」と謝って、さらに飲んだ。
そして、十数秒後、どうにかグラスの中の液体を全て飲み干した。

マスクの女性が満足げに微笑んで君から離れた。
君の体は、口から溢れさせた女性の尿に塗れていて、その濡れた部分が急速に冷え始めていた。
さらに、体の内部にも、胃の中に溜まった女性の尿のせいで、違和感があった。
ビンタの連発による頬の痛みも、まだ癒えてはいない。
むしろ、ジンジンとしたその鈍い痛みは、時間が経つにつれてさらに酷くなってきているようだ。
その証拠に、尿に塗れている体の表面は冷たいのに、両頬だけは凄まじく熱かった。

君は、軽い放心状態に陥っていた。
すべての出来事が、まるで夢のように、非現実的に思えてならなかった。
自分はどこにいるのだ?
そして、ここで何をしているのだ?
混乱が君を包み込んでいる。
しかし信じられないことに、股間を見ると、性器が力強く、まるで生命力に満ち溢れるが如くそそり立っていた。

マスクの女性が、不意に君の前でしゃがみ、無造作に君のペニスを右手で握った。
そして猛スピードでその手を上下させる。
君はその快楽に、縛られているために不自由な上体を捩った。
傍らにいた女性が、君の髪を鷲掴みにして後方へ反らし、天井を向いた君の顔に唾を吐いた。
もう一人の女性もそばに来て、同じように唾を吐き捨てる。
ふたりは交互に、そして時には同時に、連続して君の顔に唾を吐き続けた。
生温かい感触が君の顔面を被い、腫れた頬を流れていく。
むろんその間も、マスクの女性によるピストン運動は続いている。

やがて、最初に君に向かって唾を吐いた女性が、ポケットから黒くて長い布を取り出し、それで君の目を塞いだ。
その感触で、黒い布は女性物のストッキングだとわかる。
この部屋へ連行されてきたときに口に突っ込まれていた物とは違うようだが、素材は同じで、おそらく、もう片方の脚のものと思われた。
君は突然訪れた暗闇の中で、マスクの女性の手による刺激に身悶えている。

と、いきなり、またしても何かの液体が沁み込まされている布で口と鼻を被われた。
再び意識が遠のいていく。
その、意識が途切れる寸前、君はペニスの先から大量の精液を噴出した。

すべてが闇に吸い込まれていく……。

2005-01-25

監禁 #3

足音が、君の前で止まった。
「顔を上げなさい」
女性の声が、君の頭上から降り注いだ。
君は、ゆっくりと顔を上げた。
すると、先ほどのふたりに加えて、もうひとり女性が目の前に立っていた。
しかし、他の二人と違って、その女性だけは、外国の仮面舞踏会で淑女が付けているような両端が尖って吊り上がったタイプの金色のマスクで目元を隠している。

君は一瞬「知っている人か?」と考えを巡らせたが、思い当たる節はなかった。
すっきりとした顎のライン、やや薄めの唇、そして長いストレートヘア……特徴的といえば確かにそうかもしれないが、目元が隠されていると、全くわからなかった。
声を聞けばわかるかもしれない、と思ったが、その女性は一言も発しないまま、君を見下ろしている。
マスクの奥の影の中で光る眼は、冷徹な闇に沈んでいて、君は背筋が強張るほどの緊張を憶えた。
そして性器がむき出しのままであることを思い出し、必死に隠したくなったが、それは叶わない。

マスクの女性が、無表情のまま片脚をあげ、次の瞬間、踵の高いハイヒールの底で君の性器を踏んだ。
そしてそのまま、グリグリと刺激を加えていく。
すると、君の性器に変化が起きた。
それまで項垂れていた君の陰茎が、俄かに硬化し、立ち上がってきたのだ。
マスクの女性が、僅かに唇を歪めて冷笑を表情に浮かべ、立ち上がった君の陰茎の裏筋を爪先の底で何度もゆっくりと、そして執拗に擦った。
君は両手を背後で拘束されたまま上体を仰け反らせてその快感に耐えた。

屈辱だった。
何も知らされないままこの部屋に連行され、裸にされ、拘束され、そして今、勃起させられている。
君を連れてきた女性二人は、侮蔑の笑みを眼に滲ませながら腕を組んで、そんな君を悠然と見下ろしている。
マスクの女性が加える刺激は、とても絶妙だった。
次第に君は我を忘れていき、ふと気がつくと、自ら強引に腰を浮かし、貪欲にもそのハイヒールの底へ性器を押し付けて快感をせがんでいた。

と、いきなり脚による刺激が中断され、その足が床に下ろされた次の瞬間、君はマスクの女性から強烈なビンタを浴びせられた。
スナップの効いた鋭い張り手が君の左の頬に炸裂し、驚く暇もなく、続けざまに右頬にも同じ痛みが走った。
君は椅子に拘束されたまま、その衝撃のために体を揺らした。
ビンタは、情け容赦なかった。
マスクの女性は、一瞬の躊躇も遠慮もなく、連続で君を張り続けた。
たちまち君の頬は熱を持ったように赤く腫れあがり、ビンタを受けた時の鋭い痛みに加えて、頬が腫れあがっていくために生じた鈍痛も感じ始めた。
君は歯を食い縛り、眼をきつく閉じて、そのビンタの嵐が去るのを待ったが、その責めはいつ終わるともなく延々と続いた。
そして合計で三十発に近くなった頃、漸く女性は手を止めた。
君はゆっくりと眼を開けたが、頬が腫れてしまっていて、視界が歪だった。
口の中も切ってしまったらしく、舌先に血の味が伝わっている。
君は恐る恐るマスクの女性を見上げた。
女性は、そんな君の弱々しい視線を強く受け止めて、凛然と君を睥睨している。
その圧倒的な存在感の前で、君は自分の無力さを思い知らされた。
どうしてこんなことをされなければならないのか、未だに全くわからなかったが、不思議と、そのマスクの女性に対して憎悪の感情は湧かなかった。
むしろ君の中には、その女性に対して、人間が神と対峙するときに感じる安らぎに似たも感情が満ち溢れていた。
その感情は、「畏怖」と呼べるかもしれない。
もしかしたら「尊敬」かもしれなかった。
とにかく、君は、そのマスクの女性の背後に、黄金色に輝く後光が射しているのを見た。

殴られ続けた頬の痛みももちろん全く退く気配がなかったが、それよりもひどい喉の渇きが君を包み込んでいた。
君はマスクの女性から眼をそらし、肩で息をしながら、ごくりと生唾を飲み込んでその渇きを癒そうとした。
すると、そんな君の姿をこれまで沈黙したまま見ていた向かって右端の女性が、おもむろに君の髪を掴んで無理やり顔を上げさせた。
「喉が渇いたの?」
髪を掴む手の力は弱められることがなかったが、声音は優しかった。
君は怯えた犬のような眼でその女性を見て、小さく頷いた。
「はい」

君がそう答えると、マスクの女性が再び片脚を君の、今度は膝に乗せた。
そして、無造作にスカートの裾をまくった。
君はすぐ目の前で捲り上げられた女性のスカートの中の状景に、眼を丸くした。
マスクの女性は、そのスカートの中に何も穿いていなかった。
そのため、君のすぐ十五センチほど先には、その女性の艶やかに光る陰毛の茂みが出現した。
君はまるで痴呆のように、その部分を凝視してしまった。

髪を掴んでいた女性が、さらにぐいっと君の頭を上へ引っ張った。
そして、もう一人の女性が、マスクの女性に大きなワイングラスを手渡した。
マスクの女性はそれを受け取ると、自らの股間の下にそのグラスを入れ、いきなりグラスの中へ放尿を始めた。
キラキラと光る雫が辺りに飛散し、君の体をも濡らした。
そして、十センチ近くその金色の液体がグラスの中に注がれると、自然に放尿は終了した。
マスクの女性は足を下ろし、スカートの裾をそのまま落とすと、グラスを君の顔の前に近づけた。
金色に輝く透明なグラスの表面に、怯えた表情の君の顔が湾曲して映る。

2005-01-19

監禁 #2

君は自分の意思と関係なく強制的に拉致されたが、なぜか目隠しはされなかった。
口は塞がれたが、それは君が喋ったからであり、あのまま黙っていればおそらく何もされなかったであろう。
確かに体はロープによって縛られた。
しかし、現在はギチギチに縛られているが、連行時の拘束は、それほど厳重ではなかった。
もちろん、車の狭いバックシートに押し込まれていたし、少し動いたくらいで簡単に解けることはなかったが、一本のロープで全身をぐるぐる巻きにされただけで、手首や足首をそれぞれ強力に拘束されたわけではなかった。

それにしても、口に詰め込まれたストッキングには参った。
そのストッキングを脱いで口に詰めたのは相当な美人だったが、その見た目とは裏腹に汗と脂の臭いが強烈だったし、口の中に溜まった唾がそのナイロンに沁み込んで涎が流れて仕方なかった。
その口枷は、この部屋に入ってようやく外された。
君は車からこの部屋まで、女性のひとりに肩に担がれて連れてこられた。
女性達はふたりとも美人だったが、体格がとても逞しかった。
身長はふたりとも優に170センチを超えていたし、肩幅や脚のラインも鍛え抜かれているようだった。
君は軽々と運ばれ、椅子に座らされた。
そして有無を言わさぬスピードとパワーによって、あっという間に全裸にされ、今度はかなり厳重に拘束された。
背後に回された手には金属の手錠、椅子の脚に拘束された足首には、硬い革のベルトが巻かれた。

しかし、その期に及んでも、君には彼女達に対する記憶が全くなく、そしてなぜここに連れ込まれたのか、まるで理解できていなかった。
このふたりには会ったこともないし、こんな場所へも来たことはない。
この部屋は、何かの倉庫の跡地をロフトに改造したものらしかった。
エレベーターに乗ったから、おそらくは二階か三階のはずだ。
肩に担がれていたので階数表示は見えず、そのため正確なところはわからないが、そんなに長い時間、エレベーターの箱の中にはいなかったから、おそらくその程度の階数だと思われた。

それにしても、女性達はまだ戻らない。
カメラは作動し続けていて、壁に並んだモニターには自分だけが映し出され続けている。
君はその映像をぼんやりと見ながら「これは録画されているのだろうか」と考えた。
ビデオカメラに赤いランプが灯っているので、たぶん録画されているのだろう、と君は思った。
しかし、どうしてこんなビデオを撮られなければならないのか、やはりわからなかった。
君はスキャンダルを恐れる政治家や著名人ではないから、このようなビデオを撮られても、そのテープに価値があるとは思えなかった。
そうはいっても、こんなテープが勤め先の関係者に流出すれば、それはそれで洒落にならないが、だからといって降格するとかクビになるとか、そういう問題に発展するとは思えなかったし、そもそも、そんなことを心配するほど高い社会性は君にはない。
せいぜい「君は何をやっているんだ」と冷笑されるくらいだ。

この部屋は空調が効いているのか、暑くも寒くもないが、君は喉の渇きを覚えた。
ただでさえ、口に押し込まれたストッキングのせいで唾液は干からびてしまったような感じだったし、この先どうなるかわからないという漠然とした不安が緊張を強いているのかもしれなかった。
それに、さすがに背後に回した腕の上腕部が痺れつつあった。
手首にあたっている金属の感触も痛かったし、体全体が強引に椅子に固定されているので、関節や、無理に伸ばされた筋肉が、そろそろ限界に近かった。
君は死んだように沈黙を決め込んでいるビデオカメラの暗いレンズを見つめ、そして壁のモニター群を見遣り、溜め息を吐いた。

そのとき、右側後方のドアが開く音がした。
しかし君は真っ直ぐ前を向いた状態で拘束されているので、そちらへ視線を投げることはできなかった。
硬い靴音が近づいてくる。
誰かが入ってきたのは確実だったが、一言も発しないので、その気配だけを君は感じた。
しかも靴音から察するに、ひとりではないようだった。
おそらくは、三人。
先ほどの二人に、誰かが加わって戻ってきたのだろうか、と君は思い、ごくりと唾を飲み込んだ。

複数の靴音が、だだっ広い空間に反響しつつ、近づいてくる。
君は全裸の自分を省みて恥ずかしさを覚え、俯く。

2005-01-15

監禁 #1

体が動かない。
君は今、衣服を全部脱がされ、椅子に座らされた格好のまま、両手を背凭れの後ろに回して手錠で拘束され、椅子の脚に両方の足首を固定されている。
もちろん体も、ロープで頑丈に椅子の背凭れと一緒に縛られている。
部屋には、窓がない。
天井にひとつだけ蛍光灯が灯っている。
がらんとした広い部屋だ。

この部屋に連れ込まれて既に一時間近く経っている。
いや、たぶんそれくらいの時間が経過しているだろう、と君が思っているだけで、正確なところはわからない。
なぜならこの部屋には時計もないし、窓もないからだ。
だから、時間の経過を知る術がない。
この一時間、君は椅子に拘束されたまま放置されている。

君をこの部屋へ連れ込んだのは、美しい女性の二人組だが、いま彼女達の姿はない。
彼女達は君を裸にし、椅子に縛りつけると、すぐにこの部屋から出て行ってしまった。
そもそも、なぜ自分がこのような目に遭っているのか、君にはまるでわからない。
強盗でもなさそうだし、拘束はされているが、生命の危険は感じられない。
彼女達も、君をこの部屋へ連行してくるとき「おまえを殺したりするつもりはない」といった。
君はそれを鵜呑みにするほど目出度い人間ではないが、確かに殺される感じはしなかった。

ひとつだけ気になるのは、視線の先にビデオカメラが設置されていることだ。
そして壁際に十台近いモニターがあって、すべての画面にそのカメラが捉える映像が映し出されている。
即ち、全裸で椅子に縛られている君の姿だ。
君は、十人近い自分と対峙している。
それは非常に奇妙な体験だ。
両手を後ろに回して拘束されているので、すべてが丸見えだ。
股間の性器を隠すこともできていない。
力なく萎えたそれは、とても卑猥だ。

君は勤め帰りに、地下鉄の駅から自宅へ向かう道すがら、明かりの乏しい住宅街の路上で女性の二人組に声をかけられた。
女性達は「すみません」と背後から悪意のない口調で声をかけてきて、ふと足を止めた瞬間、君はいきなり何かの液体を沁み込ませたハンカチで口と鼻を塞がれ、失神した。
そして、たぶん数分後だとは思うが、意識が戻ったとき、君は車の後部座席に放り込まれていた。
その時点ではまだ服を身に付けていたが、体には既にロープが巻かれていた。
車は夜の町をかなりのスピードで走行中だった。
振り仰ぐように窓の外を見ると、暗いスモークフィルム越しに、まるで流星のように街の明かりが流れていた。
君の意識が戻った気配を察して、助手席の女性が振り向いた。
君はバックシートに転がされた体勢のまま「これは何の真似だ」と抗議した。
するとその女性は「いいから静かにしていなさい」と無感情な口調でいい、南極の氷みたいに冷たい眼で君を見据えた。
君はその視線に気圧された、口を噤んだ。
女性は、唇を歪めて微笑を浮かべた。
そして、穿いていたストッキングを脱いで無造作に丸めると、後部座席へと身体を伸ばしてきて、そのストッキングを君の口に押し込んだ。

2005-01-08

天職

君は今のこのバイトを始めてまだ二週間だが、もう「天職ではないか」と思い始めている。
仕事は、ボーリング場のシューズ貸し出し係だ。
君はカウンターの中で、ボーリング用のシューズを貸し出す。
なぜこの仕事が天職のように感じられるかというと、君が極度の足フェチで、このカウンターの中にいれば様々な靴の匂いが嗅げるからだ。
そんな君にとって、この仕事は天職以外の何物でもないだろう。
むろん、客は君好みの綺麗な女の客ばかりではないが、しかし掃き溜めに鶴が舞い降りるように、ときどきまるで奇跡が起きたみたいに、美しい人が来店する。
そんなとき、君は表面上は事務的に応対しながらも、内心では狂喜乱舞している。
何気ない態度でサイズを訊き、ボーリングシューズを手渡しながら、その靴が再びこの手に戻ってくる時のことをもう考えている。
そして君は、その客がボーリングに興じている間、悶々としながら、返却の時間をひたすら待ち続ける。
その時間は楽しいものだが、しかし同時に、お預けを食らった犬のようでもあり、少々辛い。
それでも、貸し出したものが戻ってくるのは永遠の真理だから、やがてその夢の具現の瞬間は確実に訪れる。
君は、靴が返却されると、その女の客が立ち去ってから、早速匂いを嗅ぐためにさりげなくカウンターの下へ潜る。
もちろん、周囲は警戒している。
こんなことがバレたら間違いなくクビだろうし、変態の烙印を押されるのは辛い。
君は、辺りに目がないのを確認してから、靴の中に鼻先を近づける。
足の匂いフェチの君にとって、それは夢のような至福の瞬間だ。
君はうっとりとなりながらその芳香に酔い痴れる。

さんざん遊んだ後に返却されるボーリングシューズは、君にとって宝物だ。
人によっては、とても濃厚な香りが籠もっている。
君は、その匂いを嗅ぐ。
本当なら、それをトイレに持ち込んで自家発電してしまいたいくらいだが、残念ながらそんなチャンスは滅多にない。
それでもたまに、あまりに魅力的な女性のものだと、君は我慢しきれなくなって、それを従業員用のトイレの個室に持ち込んでしまう。

女性の二人組がカウンターに近づいてきた。
どちらも美しい。
一時間ほど前にチェックインした女性達だ。
君は無意識のうちに、だんだんカウンターに接近してくる女性達の足元を、つい見つめてしまう。
そして早くも「どんな匂いがするのだろう」と期待に胸を膨らませ、営業用の害のない笑顔を作る。
君はおよそ外見からは、靴の匂いを嗅いで喜ぶ人間には見えないから、その笑顔に裏があるとは思われない。
しかし実際は違う。
その笑顔の裏側には、貪婪で歪な欲望が渦巻いている。
そんな本当の君を、他の人は誰も知らない。
秘密の君だ。
君は思う。
今日のホール内は暖房がよく効いているし、おそらく素敵な香りが熟成されていることだろう、と。
それを想像すると、たまらなく下半身が疼いた。
そして間もなく、ホールから貸与されている制服のズボンの中で、君の性器は硬度を増した。
いよいよ女性達がカウンターに近づいた。
君の興奮は高まっていく。
一時間以上ボーリングに興じた後に返却されるボーリングシューズが、もうすぐ手に入る。
君はその温もりと芳香を夢想しながら、カウンターに性器を押し付けるようにして立ち、さらに強力な笑顔を浮かべる。

女性達は、カウンターの中の君がそのように暗い欲望の炎を胸の内に燃え滾らせていることなど、まるで知らない。
知る由もない。