彼女はとても野性的だ。
獰猛な獣のような、しなやかな肢体に、サディスティックな雰囲気を纏っている。
君は、そんな彼女に支配されている。
彼女の瞳は、紫色だ。
そのカラーコンタクトの瞳に見つめられる度、君は自分の矮小さを自覚する。
君は今、彼女の前で跪いている。
地面に近い位置から見上げる彼女は、神々しい。
よく陽に焼けた褐色の肌は艶かしく、威圧的な脚が君の前に聳えている。
君は、彼女の奴隷だ。
彼女の命令は君にとって絶対であり、服従は権利であると同時に義務でもある。
彼女の脚は、踵の高い赤いハイヒールで完結している。
そのヒールの底が、君の頭に置かれた。
君は床に額を擦りつけるようにして平伏し、その感触を受け止める。
彼女は、足に力を込め、君を踏みにじる。
君は、されるがままだが、それは至福の瞬間でもある。
マゾヒストである君にとって、屈辱は快楽だ。
美しい支配者に踏まれて、君はこのうえない幸福を感じている。
彼女は、君の頭から足を下ろした。
そして、そのまましゃがむと、おもむろに君の顎に手を掛けて前を向かせる。
君は至近距離で紫色の瞳と対峙する。
その瞳には全く感情が滲んではいない。
それは、人間を見る目ではない。
彼女にとって、君は一匹の奴隷であり、人間ではない。
だからその瞳に何の感情も現れていないのは、至極当然のことだ。
濡れたように光る彼女の唇がほんの僅かに開いて、その隙間から真っ赤な舌の先が覗く。
彼女は、その爬虫類のような舌を蠢かせながら、少しだけ唇を舐めてみせる。
その官能的な動作に、君の緊張は一気に高まる。
君は吸い寄せられるように、その赤い舌の先端を見つめる。
やがて彼女は再び舌を唇の中に収めた。
そしていきなり、冷徹な眼で君を見据えたまま、強く君の頬を掌で張った。
乾いた音が室内に響く。
君は歯を食い縛ってその痺れるような衝撃に耐えた。
彼女は、続けざまに何発も連続して君の頬を張った。
見る間に君の両頬が、まるで猿の尻のように赤く腫れ上がっていく。
しかし依然として彼女の紫色の瞳には、何の感情も浮かんでいない。
まるで純度の高い宝石のような聡明な光をただ静かに湛えているだけだ。
2005-06-22
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