君の体を、強烈なスポットライトが照らしている。
視界は、まるで露出過多の印画紙のように白い。
そのピンポイントで注がれる光は君の全てを曝け出させているが、そんな君の首には車のナンバープレートほどの大きさのボール紙製のボードが掛けられていて、そこにはフェルトペンで『No,012』と記されている。
適当に殴り書きしただけの、乱暴な文字だ。
君は今、全裸で背筋を伸ばして立ち、両手を後ろに回して革製の手錠で拘束されている。
首には太い革の首輪が巻かれ、それに繋がった鎖は金属製で重い。
足首にも手首と同じような革のベルトが巻かれ、そして首輪と同じ類の太い鎖が付いている。
その二本の鎖は、壁に取り付けられたフックへと続いている。
君が立っているのは円形のステージのような場所だ。
しかしスポットライトの光量が強すぎるために、周囲は闇で、様子はまるでわからない。
それでも、人の気配は感じられる。
人の気配というより、露骨に好奇心剥き出しの強い視線が、全方位から自分に向けて注がれているのを肌で感じている。
君は周囲に横溢する光の氾濫に目を細めて立っている。
垂直に降り注ぐ光のため、床に落ちる君の影は短く、濃い。
そして隠すことのできないでいる股間にぶら下がる性器は萎え、その周囲には毛がない。
そのうえ君は仮性包茎なので、現在、亀頭はほとんど包皮に被われており、まるで赤ちゃんの股間のようだ。
全裸で強烈な光に晒されているため、君はうっすらと汗をかいている。
しかし裸足の床は模造大理石なので冷たく、君はこの場所に立ったときからずっとその温度差に違和感を覚えている。
君は黒い布で目隠しを施されたうえで、誰かに鎖を引かれてここまできた。
そして目隠しを外され、予め十秒間目を閉じているように命じられていたので、胸のうちできっちり十秒数えた後、君は目を開いた。
だから、自分をここまで連れてきたその人物と直接的な接触があったわけではなかったが、引いてきたのは、たぶん女性だった、と君は思う。
なぜなら、引かれて歩いているとき、常に微かに女性用の香水の香りが漂っていたからだ。
しかし誰によってここまで連れてこられたのか、それを確かめる術は、君にはない。
というより、この後の自分の運命すら、君には全く予想がつかないのだ。
誰かに買われるかもしれない。
誰にも買われないかもしれない。
やがて。
静寂の空間に乾いた木槌の音が、コン、と一度だけ短く響いた。
君が立っている円形ステージも含めて、周辺の空気が俄かに張り詰める。
いよいよオークションの開始だ。
君の運命は、おそらく数分後には確定するだろう。
2005-10-15
2005-10-01
噴水
夏の終わりの雨
ほんの少しだけ空気が冷える
買ったばかりのシャツ
午後は倦怠
バスが明日を追い越していく
水溜りを蹴って
咲き乱れる色とりどりの傘
群集を縫って歩く
壊れた希望の修復箇所
公園に人は疎ら
尖ったヒールの踵
昨夜遅くに踏んだ何かの感触
柔から硬への変化は微妙
他人行儀な星明りの吐息
記憶はすみれ色
紅茶の香り
濡れて黒ずむ木製のベンチ
雨の中に佇む噴水
上質な絹のような孤独
水が上昇と落下を繰り返す
それはきっと何かに似ている予感
ほんの少しだけ空気が冷える
買ったばかりのシャツ
午後は倦怠
バスが明日を追い越していく
水溜りを蹴って
咲き乱れる色とりどりの傘
群集を縫って歩く
壊れた希望の修復箇所
公園に人は疎ら
尖ったヒールの踵
昨夜遅くに踏んだ何かの感触
柔から硬への変化は微妙
他人行儀な星明りの吐息
記憶はすみれ色
紅茶の香り
濡れて黒ずむ木製のベンチ
雨の中に佇む噴水
上質な絹のような孤独
水が上昇と落下を繰り返す
それはきっと何かに似ている予感
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