2006-04-08

Strawberry & Milk

君は床に膝をつき、女王様を見上げている。
捨てられた犬のように憐れな目だ。
視点がびくついている。
全裸の君の貧相な体は、既に無数の鞭の跡が残されている。
しかも、腰を浮かしているその尻には、卑猥にうねるピンク色のバイブレーターが埋められている。

君の二つの乳首は金属製のクリップに挟まれ、それから続く二本の細い鎖は女王様の手に握られている。
そして君の前に凛然と立つ女王様がその鎖を気まぐれに引っ張ると、君の体は反射的に跳ねて醜態を晒してしまう。
君は今、世の中で最も卑しく、憐れで、救いの無い人間と化している。
人としての仮面を潔く捨て去った君は輝いているが、その輝きは宇宙のブラックホールより暗く、そしておぞましい。
君は獣だ。
知性と理性を捨てた、猿と変わらない存在だ。
まるで肥大した脳が破裂したように、君の種としてのオスのプライドは瓦解している。

女王様は細い鎖を捨てると、傍らのテーブルの上に載っているガラス製の皿から苺をひとつ摘み上げて、それを口に含んだ。
そしてじっと零下の視線で君を見据えながら、その苺を咀嚼し、たっぷりと唾液を含ませると、いきなり君の顔の前、数十センチの距離までその美しい顔を接近させ、その苺の残骸を君の顔に吐き捨てた。
君は膝の上に手を置いたまま、その苺を顔面で受けた。
生温かいその苺は、ゆっくりと君の顔を流れ落ちていく。
甘い香りが君の煩悩を焦がす。
さらに、女王様は君に両手を揃えて前へ差し出すように命じ、君が従うと、そこへ立て続けにいくつ苺を口の中で咀嚼しては吐き出した。
君は苺と唾液に塗れたまま、尻の穴を刺激する快感を堪えながら、じっとその残骸が増えていく様子を眺めている。

やがて女王様はミルクのグラスを持ち、それを口に含み、唇を窄めて勢いよく君に吹き付けた。
君は反射的に目を閉じたが、そのことが余計に女王様を苛だたせる。
女王様は、君が両手で持っている苺の残骸の中へブーツの爪先を突っ込むと、そのまま思いっきり床へ足を下ろした。
君はなす術もなくそのまま前方へ倒れ込んでしまう。
床に苺の残骸が飛散する。
その中へ、女王様がさらに大量のミルクを口に含んで吐き出す。
そして君の頭を容赦なく踏み、ピンク色に濁ったその残骸に君の顔を押し付ける。

「食べなさいよ、ほら」

女王様はまるで投げ捨てた煙草の火をブーツの底で消すように、君の後頭部を強く踏み躙る。
君は両手を広げて床に掌をつきながら倒れ込み、バイブレーターが蠢く卑猥な尻を高く掲げて、まるで犬のようにその甘い苺を一心不乱に頬張っていく。

2006-03-03

饒舌な傷

凍える真夜中の路上

白く濁る息

震える骨

尖った囁き

悪魔の微笑

麻痺する理性

置換された快楽

生まれたままの姿

貪欲な感性の断崖

侵蝕する月

海流の交差と乖離

アリューシャンの零下

緻密な極点

揺らぐ地軸

指先の前奏曲

華やかに暗転する記憶

擦れ合う淫靡

饒舌な傷の主張

2006-02-03

PIG

「まるで豚ね、お前」

高らかに笑いながら女王様が優雅に鞭を一閃する。
君は全裸で四つん這いになったまま、床を這いずり回っている。
背中に容赦なく振り下ろされる鋭い鞭が、見る間に君の皮膚を赤く彩っていく。
君はその痛みに堪えながら、まさしく家畜の豚が飼い主に行動をコントロールされるように、鞭に促されながら床を無様に右往左往する。

狭い部屋だ。
女王様は逃げ惑う君を楽しそうな鞭で打ちながら、時々君の尻を、腹を、抉るように硬いブーツの甲で蹴り上げている。
君はその度に体を弾ませながら、それでも立ち上がることは許されないので、四つん這いのままその鞭と蹴りから少しでも逃れようと体をよじっている。

もう既に君の息は上がっていて、全身にびっしょりと汗をかいている。
固いフローリングの床につきっ放しの膝が痛い。
膝頭の皮膚が擦れて、血が滲み始めている。
体を支え続けている肘も限界に近い。
そのため、時折体勢を崩して腹這いになってしまいそうになるが、するとすかさずその背中を女王様が踏みつけ、そして尻を蹴り飛ばす。

「休むんじゃないわよ、豚!」

「申し訳ございません」

君は声を張り上げ、尻を蹴り飛ばされながらも体勢を立て直すと、再び四つん這いで進み始める。
そうして進みながら、ふと自らの股間を覗き見ると、ペニスはさすがに萎えている。
それに気づいた女王様が、君の背後に回ると、足の間にぶら下がるペニスを後方から容赦なく、ぶらぶらと揺れている憐れな睾丸もろとも蹴り上げる。
君は頭から床に突っ伏し、呻きながら思わず両手で股間を押さえて蹲ってしまう。

「ちゃんと勃起させてなさい、失礼ね」

「申し訳ございません……」

君は蹲ったまま小声で謝罪する。
しかし女王様は容赦ない。

「休むなっていうのが、わからないの? お前」

君の背中に一層鋭い鞭を打ちつけながら、笑みを完全に消して女王様が言う。

「申し訳ございません」

君はよろよろと体を起こすと、器用に左手だけで体を支え、右手の甲で額の汗を拭った。
下半身全体が痺れている感じだったが、もう休んではいられない。
君は奥歯を噛み締めてその鈍痛に耐えながら、右手を自らの股間へ伸ばす。

「早く勃起させなさい」

女王様の厳しい叱責が飛ぶ。

「はい!」

君は不自然な体勢のまま萎えたペニスを握り、目の前で腕を組んで立っている女王様を仰ぎ見ながら必死になって激しく擦る。

「全く生意気な豚だわ」

女王様は嫌悪感を露骨に滲ませながら冷ややかに君を見下ろしてそう邪険に吐き捨てると、君の頭頂部にブーツの底を置き、そのまま勢いよく床に押し付けた。
そして、全体重を掛けて君を踏み躙る。

君はそのままの体勢で、なおも自らを擦り続ける。

2006-01-11

赤い涙

寒い部屋だ。
空気が冷え冷えとしていて、全裸の君の肌を針のように刺している。

君は今、コンクリートの壁に打ち据えられた頑丈な十字の黒い木製の磔台に拘束されている。
両腕は水平に持ち上げられて、磔台の先端に短い鎖で取り付けられた革製のベルトによって手首を繋がれ、足は閉じた状態で揃えて両手と同じようにがっちりと固定されている。
革のベルトに繋がる鎖が非常に短いため、君はほとんど身動きが取れない。
しかも部屋が異常に寒いので、裸足の足の裏から硬いフローリングの床の冷気が直に伝わり、背筋を這い登ってくる。
君はガチガチと歯を鳴らしながら、全身に鳥肌を立てている。

縛られている君の体は、なぜかつるりとしている。
それは、全身の毛を剃っているためだ。
股間だけではない。腕も脚も髪も髭も全て剃毛している。
そんな君の体は白い。
もう何ヶ月も窓ひとつないこの部屋に監禁されているため、太陽を全く浴びていない。
天井に灯る青白い蛍光灯の光が、そんな君をまるで蝋人形のように映している。

やがて、壁にひとつだけある重い木製の扉が開いて、ひとりの女性が入ってくる。
長い黒革のブーツ。
その尖った踵がコツコツと硬質な音を響かせながら、少しずつ君に近づいてくる。
背の高い女性だ。
全体的な印象としては細身だが、圧倒的な存在感を誇示している。
長い髪が歩を進めるたびに緩やかに波打って、それに合わせてこの部屋の沈滞していた空気が揺らめく。
そして、微かに香水の香りが君の鼻腔の奥に届く。

女性は、全身を黒い革のボンデージに包んでいる。
鋭く切れ込んだビキニタイプのショーツから伸びる脚のシルエットが美しい。
それはブーツの雰囲気と見事に調和している。
上半身は、コルセットのような形状をしたボンデージだ。
完璧にくびれた腰のラインが強調されている。

その女性の手には、小さな箱がある。
表面に凝ったレリーフが施された木の小箱だ。
一見、それはオルコールのようだが、そうではない。
女性は君の前まで進んで、45センチの距離に立つと、悠然と君を見下ろし、その小箱を開く。
中には、細い針が何本も入っている。
女性はその針を一本、優雅な仕草で摘み上げると、君の目の前に示した。
君の視界が、艶やかに光る銀色の一筋に支配される。
女性は次の瞬間、毒々しい色をした舌を出して、その針の先端を舐めた。
そして、じっと君の瞳を覗き込んだまま針の先端を君の乳首にあてがう。
その感触に、君の体が一瞬ビクンと跳ねる。
全身の感覚が、乳首に触れているその尖った針の先端に集中する。

「動いては駄目よ」

女性はそう言うと、手に持っていた箱を君の肩に置いた。
箱は微妙なバランスを保ったまま、君の肩の筋肉の上で静止した。
緊張で君の体は硬直している。
そして、女性はゆっくりと細い針を君の乳首に刺し入れていく。
鋭い痛みが君の神経を突き抜けていく。
君は動かないように全身を強張らせながら歯を食い縛り、その痛みを受け入れる。

針の先が埋められた乳首の一点から、まるで君の精神が涙を滴らせるように、細く赤い血が流れる。

2005-12-22

Ride On

濃密な部屋の空気がほんの少し揺らぐ。
君は両手を揃えて体の横にぴたりと付け、直立不動だ。
そんな君に、女王様がロープを巻きつけていく。
彼女が体の位置を変える度に、香水と微かな甘い髪の香りが君を挑発する。
そして、ときどき柔らかい肌が君の体に触れる。
全裸の君は、既に屹立した性器を晒している。

君は両手を後ろに回すよう命じられ、そのまま縛り上げられた。
しかし拘束は上半身だけだ。
ロープが肉に食い込みながら君の上半身に模様を描いている。

女王様は君を縛り終えると、いったん四つん這いになるように命じた。
四つん這いといっても、両手が使えないので、君はまず腹這いになり、それから膝を立てて尻を持ち上げた。
その尻に、ひんやりとした感触が伝わる。
女王様が大量のローションを垂らしたのだ。
そして、手術用の薄い手袋を嵌めた女王様の人差し指が君の尻の穴を刺激し、やがてゆっくりと挿入された。
君は思わず吐息を洩らし、腰を蠢かせてしまう。
そのふしだらな尻を、女王様がもう一方の手でピシリと打つ。

じきに、指は更に追加されていき、三本が入ったところで、女王様は執拗に君の尻の穴を広げた。
ローションとビニールの手袋が君の尻の穴の中で擦れあって、卑猥な音を立てている。
君は頬を冷たい床に押し付けながら、その快感に身悶えている。

やがて女王様は指を引き抜き、君に立つよう命じた。
君はよろよろと立ち上がり、女王様と向き合う。
その彼女の下半身には、男性の性器を模したペニスバンドが装着されている。
と、君はいきなりビンタを打たれた。
「壁に手を付いて、尻をこちらに向けなさい」

君は壁を向き、足を少し開き気味にして体を前傾させて壁に両手をついた。
コンクリートのザラザラした感触が手のひらに伝わる。
そして、尻の穴に異物が挿入された。
君は思わず上半身を仰け反らせて呻いてしまう。
女王様が擬似ペニスを深く君の尻の穴に沈め、ゆっくりと腰を突き出す。
それと同時に両手を君の体の前に回して乳首を摘み、抓る。
女王様の腰の動きに合わせて君も体を前後させる。
リズムが同調していくにつれ、君の息も荒くなる。

しばらくそれが続いた後、女王様は君を貫いたまま、君の体を壁から離して、すぐ背後にあるソファに腰を下ろした。
そして君に「そのまま、こっちを向きなさい」と命じる。
君は、挿入された擬似ペニスを軸にするようにして、女王様の上でぎごちなく体を回転させた。
女王様が君の腰に両手を回し、支える。
卑猥に勃起した性器が女王様の腹の上に置かれる。
その体勢のまま、女王様は腰を突き上げた。
両手を背後で拘束されている君はバランスを崩しそうになるが、女王様が腰を支えているため、転げ落ちるようなことはない。
しかし、女王様が体を動かす度に亀頭が彼女の腹で擦れて、君は身悶えてしまう。

女王様はそんな君を嘲笑い、そして睨みながら、腰を動かす。
君は彼女に支えられながら体を弾ませ、息を弾ませ、その快感に身を委ねる。

2005-11-19

月の囁き

高い位置にはめ込まれた鉄格子の小さな窓から、青い月光が千切れながらコンクリートの冷たい床に落ちている。
君は全裸で、煉瓦の壁に凭れて座りながら、もうずっと膝を抱えている。
その両足首にはそれぞれ革製の足枷が巻かれ、それに繋がる短い鎖の先には重い鉄球が取り付けられている。

部屋は狭く、暗い。
二畳ほどのスペースで、天井に明かりはない。
部屋の隅に様式の便器がひとつだけある。
廊下に面した壁にだけ鉄製の扉があり、上部に覗き窓が付いている。
現在の時刻はわからないが、夜だということは窓から洩れ入る月光で認識できる。

君は、慢性的に寝不足だ。
この収容所では、囚人に自由はない。
囚人には、たとえ深夜であろうと、女性看守の慰み物としての勤めがある。
女性看守は、毎晩酔っ払って独房を訪れては、様々な道具を使って君を犯し、折檻する。
そのため君は、常に満身創痍だ。
体には無数の鞭の跡が刻まれ、尻の穴は裂けてしまっている。
そして今日の君はニ日前から一切、水も食料も与えられていないから、ひどい空腹と喉の渇きを覚えている。
この二日間、君は完全に放置されている。
誰とも喋っていないし、誰にも会っていない。

君は膝を抱えて、狭い部屋の隅で小さくなりながら、じっと闇を凝視している。
他の房から、囚人達の悲鳴が闇を裂いて響き渡っている。
どこでどんなことが行われているのか……。
わざわざ想像しなくても、君にはわかる。
なぜならば、同じことをきみはいつも経験しているからだ。

やがて廊下に固い靴音が響く。
女性看守のブーツの踵が刻む靴音だ。
だんだんその音が近づいてきて、君の房の前で止まった。
君は緊張し、ごくりと生唾を飲み込む。
次の瞬間、ドアのロックが外され、ギギギーと重々しい音を立てながらゆっくりと扉が開く。
廊下から洩れる明かりが眩しくて、目を細めながら君はドアの方向を見る。
そこには、女性看守が立っていた。
おそろしく体格の良い、長身の看守だ。
手に、餌らしいトレイを持っている。
君は慌てて立ち上がると、重い鉄球を引き摺りながらその女性看守の前へ進み、跪く。
女性看守は無言のまましばらくそんな君を見下ろした後、しゃがみ、床にトレイを置く。
そのトレイにはボウルがひとつだけ載っていて、その中には、明らかに残飯とわかる様々な食材が放り込まれている。
野菜や肉の切れ端、パサパサに乾いたご飯、何かの汁。
よく見ると、梅干の種やバナナの皮まで入っている。
女性看守は立ち上がり、そのトレイをブーツの爪先で君の前へ蹴りやる。
しかし、まだ手をつけることはできない。
女性看守が、残忍な笑みを浮かべて言う。

「餌よ。お腹が空いているでしょう? でも、これではあまりに味気ないわね。もっと美味しくしてあげるわ」

そう言うと、女性看守は続けざまに、そのボウルの中に唾を吐いた。
そして、短いスカートをたくし上げて乱暴に下着を下ろすと、そのボウルを跨いで勢いよく放尿する。
房内に強いアンモニア臭が立ち込め、残飯のボウルから湯気が昇る。
君は、そのボウルの中身を凝視する。
濁った湯の中に浮かぶ残飯……。
そこへ、股間を拭ったティッシュが舞い降りてくる。
さらに女性看守は、下着を穿き直すと、君の目の前でブーツの足をそのボウルの中に突っ込み、爪先で乱暴にその残飯をくぢゃぐちゃに踏み潰していく。
君は縛られたように硬直しながらその様子を見つめている。
最後に女性看守は、片脚を持ち上げてブーツを君の頭に置くと、ポケットからティッシュを取り出し、ブーツの表面を適当に拭いて、それもボウルの中に捨てる。
そして君の頭から脚を下ろす。
銀色のボウルの縁で、青い月光が撥ねる。

「わたしがここから出たら、この餌を食べてもいいわよ」

冷笑を唇の端に滲ませながら女性看守はそう言うと、踵を返し、君の房を出た。
重い扉が閉じられた瞬間、もう人間としての尊厳など微塵も残されていない君はボウルに屈みこみ、両手でその残飯を掴むと、再び施錠されたロックの音と透き通るような青い月光の中、むさぼるように食べ始める。

2005-11-02

太陽のしずく

砂漠の岸辺

蜃気楼のように浮かぶ街の灯

空が夜に侵されていく

群青色の砂に刻まれたジープの轍

谷へ向かう道

物音は死んだ

甘美な絶望

苦痛の記憶

わたしは誰? と呟く

耳元で暴れる風

気温の急低下

黒い爪の幻想

疼く吐息

前奏曲は不要

囁きで殺して

瞳の奥に差す獰猛な闇

ピンク色の巨大な夕陽が大地の果てへ沈んでいく

その最後のひとしずくの中に希望の欠片を探す

2005-10-15

オークション

君の体を、強烈なスポットライトが照らしている。
視界は、まるで露出過多の印画紙のように白い。
そのピンポイントで注がれる光は君の全てを曝け出させているが、そんな君の首には車のナンバープレートほどの大きさのボール紙製のボードが掛けられていて、そこにはフェルトペンで『No,012』と記されている。
適当に殴り書きしただけの、乱暴な文字だ。

君は今、全裸で背筋を伸ばして立ち、両手を後ろに回して革製の手錠で拘束されている。
首には太い革の首輪が巻かれ、それに繋がった鎖は金属製で重い。
足首にも手首と同じような革のベルトが巻かれ、そして首輪と同じ類の太い鎖が付いている。
その二本の鎖は、壁に取り付けられたフックへと続いている。

君が立っているのは円形のステージのような場所だ。
しかしスポットライトの光量が強すぎるために、周囲は闇で、様子はまるでわからない。
それでも、人の気配は感じられる。
人の気配というより、露骨に好奇心剥き出しの強い視線が、全方位から自分に向けて注がれているのを肌で感じている。

君は周囲に横溢する光の氾濫に目を細めて立っている。
垂直に降り注ぐ光のため、床に落ちる君の影は短く、濃い。
そして隠すことのできないでいる股間にぶら下がる性器は萎え、その周囲には毛がない。
そのうえ君は仮性包茎なので、現在、亀頭はほとんど包皮に被われており、まるで赤ちゃんの股間のようだ。

全裸で強烈な光に晒されているため、君はうっすらと汗をかいている。
しかし裸足の床は模造大理石なので冷たく、君はこの場所に立ったときからずっとその温度差に違和感を覚えている。

君は黒い布で目隠しを施されたうえで、誰かに鎖を引かれてここまできた。
そして目隠しを外され、予め十秒間目を閉じているように命じられていたので、胸のうちできっちり十秒数えた後、君は目を開いた。
だから、自分をここまで連れてきたその人物と直接的な接触があったわけではなかったが、引いてきたのは、たぶん女性だった、と君は思う。
なぜなら、引かれて歩いているとき、常に微かに女性用の香水の香りが漂っていたからだ。
しかし誰によってここまで連れてこられたのか、それを確かめる術は、君にはない。
というより、この後の自分の運命すら、君には全く予想がつかないのだ。

誰かに買われるかもしれない。
誰にも買われないかもしれない。

やがて。
静寂の空間に乾いた木槌の音が、コン、と一度だけ短く響いた。
君が立っている円形ステージも含めて、周辺の空気が俄かに張り詰める。
いよいよオークションの開始だ。

君の運命は、おそらく数分後には確定するだろう。

2005-10-01

噴水

夏の終わりの雨

ほんの少しだけ空気が冷える

買ったばかりのシャツ

午後は倦怠

バスが明日を追い越していく

水溜りを蹴って

咲き乱れる色とりどりの傘

群集を縫って歩く

壊れた希望の修復箇所

公園に人は疎ら

尖ったヒールの踵

昨夜遅くに踏んだ何かの感触

柔から硬への変化は微妙

他人行儀な星明りの吐息

記憶はすみれ色

紅茶の香り

濡れて黒ずむ木製のベンチ

雨の中に佇む噴水

上質な絹のような孤独

水が上昇と落下を繰り返す

それはきっと何かに似ている予感

2005-09-10

サイクリング・ロード

君は、穏やかな日曜日の午後、ひとりでよく自転車を走らせる。
とくに理由があるわけではない。
自宅から三キロほどのところに一級河川が流れていて、その土手の上の道が一部サイクリング・ロードとして整備されているから、君はたいてい、そこへ行く。
広い河川敷は公園になっていて、天気の良い小春日和の午後など、川面を渡って吹いてくる風が心地いい。

日曜日の午後の河川敷は、平和だ。
野球のグラウンドからは金属バットがボールを打つカキーンという音が快く響き、老人達はのんびりとゲートボールに興じ、子供達がダンボールの切れ端を使って草の斜面を滑り降りたりしている。
君はサングラスをかけて、ゆっくりと自転車を漕ぎながらそんな風景を見渡しつつ、サイクリング・ロードを走っていく。

君が乗っている赤いマウンテン・バイクはまだ新車同様で、購入して三ヶ月も経っていない。
あらゆる部分が、陽射しを浴びてキラキラと光っている。
君は道端に自転車を止め、バックパックを背中から下ろすと、その中から水のペットボトルを取り出した。
そしてサングラスを外して頭の上へ載せ、立ったまま水を飲む。
顎を上に向けると太陽の光が網膜を焼いた。
ペットボトルの中の水に光が屈折してプリズムを散らせる。
君は半分ほどを一息に飲み干すと、ペットボトルをバックパックに戻した。
そして草むらに腰を下ろして再びサングラスをかけ、サイクリング・ロードの先へ視線を走らせる。

前方の陽炎が立つ先に、やがてクラブ活動と思しき女子学生の集団が現れる。
体操着に身を包んだ彼女達は、掛け声を上げながら、健康的な肉体を弾ませてだんだん近づいてくる。
それを認めた瞬間、君の中に、明るい日曜の午後の雰囲気とは全く似合わない暗くて邪悪な衝動が生まれた。
君は、自制しようとしたが結局誘惑に負け、外に出したシャツの裾の下でそっとジーンズのジッパーを下ろすと、僅かに硬くなりつつあるペニスを引っ張り出してしまう。

数十秒後、彼女達が君の前を通過していった。
君は彼女達の若く健やかな太腿の躍動を眺めながら、シャツの裾の下で強くペニスを握った。
そしてサングラス越しにじっと凝視しながら、その手を忙しなく上下に動かす……。