君は、穏やかな日曜日の午後、ひとりでよく自転車を走らせる。
とくに理由があるわけではない。
自宅から三キロほどのところに一級河川が流れていて、その土手の上の道が一部サイクリング・ロードとして整備されているから、君はたいてい、そこへ行く。
広い河川敷は公園になっていて、天気の良い小春日和の午後など、川面を渡って吹いてくる風が心地いい。
日曜日の午後の河川敷は、平和だ。
野球のグラウンドからは金属バットがボールを打つカキーンという音が快く響き、老人達はのんびりとゲートボールに興じ、子供達がダンボールの切れ端を使って草の斜面を滑り降りたりしている。
君はサングラスをかけて、ゆっくりと自転車を漕ぎながらそんな風景を見渡しつつ、サイクリング・ロードを走っていく。
君が乗っている赤いマウンテン・バイクはまだ新車同様で、購入して三ヶ月も経っていない。
あらゆる部分が、陽射しを浴びてキラキラと光っている。
君は道端に自転車を止め、バックパックを背中から下ろすと、その中から水のペットボトルを取り出した。
そしてサングラスを外して頭の上へ載せ、立ったまま水を飲む。
顎を上に向けると太陽の光が網膜を焼いた。
ペットボトルの中の水に光が屈折してプリズムを散らせる。
君は半分ほどを一息に飲み干すと、ペットボトルをバックパックに戻した。
そして草むらに腰を下ろして再びサングラスをかけ、サイクリング・ロードの先へ視線を走らせる。
前方の陽炎が立つ先に、やがてクラブ活動と思しき女子学生の集団が現れる。
体操着に身を包んだ彼女達は、掛け声を上げながら、健康的な肉体を弾ませてだんだん近づいてくる。
それを認めた瞬間、君の中に、明るい日曜の午後の雰囲気とは全く似合わない暗くて邪悪な衝動が生まれた。
君は、自制しようとしたが結局誘惑に負け、外に出したシャツの裾の下でそっとジーンズのジッパーを下ろすと、僅かに硬くなりつつあるペニスを引っ張り出してしまう。
数十秒後、彼女達が君の前を通過していった。
君は彼女達の若く健やかな太腿の躍動を眺めながら、シャツの裾の下で強くペニスを握った。
そしてサングラス越しにじっと凝視しながら、その手を忙しなく上下に動かす……。
2005-09-10
2005-08-26
Sweet Hot Chocolate.
コンロにかけられたソースパンの中で茶褐色の液体がドロドロに溶けて、甘い香りが部屋に充満し始めた。
君は全裸で床に正坐しながら、その香りを嗅いだ。
しかし黒い布で目隠しをされているため、視界は遮られている。
君のすぐ前には、無人の椅子が一脚、ぽつんと置かれている。
ソースパンを温めているのは、背の高い、美しい女性だ。
その女性は紺色のタイトなミニスカートに白いシンプルな長袖のシャツといういでたちで、薄いベージュのストッキングで脚を包み、靴やスリッパは履いていない。
長い髪が肩にかかっていて、女性は時折、何気なくその前髪を指先でかきあげている。
女性はやがて、コンロの火を消すと、ソースパンを流し台へ移し、氷を入れたボウルの上へそれを置いて熱いチョコレートを冷ました。
そして、しかし凝固してしまわないよう、スプーンで静かに攪拌する。
そうしながら、女性は何気なく振り返ってちらりと君を見た。
君は背筋をピンと伸ばし、きちんと正坐している。
その様子に、少し離れた場所から女性は微笑を浮かべるが、もちろん君には見えない。
君は軽く拳を握ってその手を太腿の上に置いたまま、不動だ。
じきにチョコレートは人肌程度にまで冷める。
女性は人差し指で少しチョコレートを掬って舐め、温度の低下を確認すると、ソースパンを持って君の前へ移動する。
誰かが近づいてくる気配を君は感じたが、その正体はわからない。
ただ、チョコレートの匂いが強まったことと、微かな衣擦れの音で気配は感じる。
やがて女性は君の前まで来ると、椅子に座り、いったん床にソースパンを置いてから、静かに脚を組み、音もなくストッキングを脱いだ。
君は体を固くしながら、全身の神経を研ぎ澄ましている。
その緊張した君の様子に、女性は唇を歪ませるようにして静かに小さく笑い、脱ぎ終えたストッキングで君の鼻先を挑発した。
その一陣のそよ風のような感触に、君はビクリとしてしまう。
ほんの一瞬、チョコレートの甘さとは異質の香りが君を掠めた。
女性は、そのストッキングを捨てると、爪先をソースパンの中に浸した。
そして指先や足の裏へ溶けたチョコレート充分に絡ませていく。
やがて充分に絡まると、女性は爪先を持ち上げ、そのまま君の鼻先に突きつけた。
「舐めなさい」
そう命じて、女性はいきなりチョコレートの爪先を君の顔、鼻から口にかけての部分に押し付けた。
君はその感触で、顔に爪先が押し付けられたことを知り、瞬間沸騰して手探りでその足の踵を捉えて支えると、チョコレートに彩られた柔らかく甘いその足に舌を伸ばした。
君は腰を半ば浮かせて昂りながら、温かいチョコレートに塗れた女性の足の親指にむしゃぶりつき、一心不乱に舐め続けている。
女性が、身を屈めてソースパンを拾い上げ、その中身を、脛の辺りから爪先に向けて流す。
注がれるチョコレートが漣のように押し寄せてきて、君は温かく甘いそれに塗れていく。
そして君の唇から溢れたチョコレートは静かに顎を伝い、ゆっくりと体を流れ落ちていく。
君は全裸で床に正坐しながら、その香りを嗅いだ。
しかし黒い布で目隠しをされているため、視界は遮られている。
君のすぐ前には、無人の椅子が一脚、ぽつんと置かれている。
ソースパンを温めているのは、背の高い、美しい女性だ。
その女性は紺色のタイトなミニスカートに白いシンプルな長袖のシャツといういでたちで、薄いベージュのストッキングで脚を包み、靴やスリッパは履いていない。
長い髪が肩にかかっていて、女性は時折、何気なくその前髪を指先でかきあげている。
女性はやがて、コンロの火を消すと、ソースパンを流し台へ移し、氷を入れたボウルの上へそれを置いて熱いチョコレートを冷ました。
そして、しかし凝固してしまわないよう、スプーンで静かに攪拌する。
そうしながら、女性は何気なく振り返ってちらりと君を見た。
君は背筋をピンと伸ばし、きちんと正坐している。
その様子に、少し離れた場所から女性は微笑を浮かべるが、もちろん君には見えない。
君は軽く拳を握ってその手を太腿の上に置いたまま、不動だ。
じきにチョコレートは人肌程度にまで冷める。
女性は人差し指で少しチョコレートを掬って舐め、温度の低下を確認すると、ソースパンを持って君の前へ移動する。
誰かが近づいてくる気配を君は感じたが、その正体はわからない。
ただ、チョコレートの匂いが強まったことと、微かな衣擦れの音で気配は感じる。
やがて女性は君の前まで来ると、椅子に座り、いったん床にソースパンを置いてから、静かに脚を組み、音もなくストッキングを脱いだ。
君は体を固くしながら、全身の神経を研ぎ澄ましている。
その緊張した君の様子に、女性は唇を歪ませるようにして静かに小さく笑い、脱ぎ終えたストッキングで君の鼻先を挑発した。
その一陣のそよ風のような感触に、君はビクリとしてしまう。
ほんの一瞬、チョコレートの甘さとは異質の香りが君を掠めた。
女性は、そのストッキングを捨てると、爪先をソースパンの中に浸した。
そして指先や足の裏へ溶けたチョコレート充分に絡ませていく。
やがて充分に絡まると、女性は爪先を持ち上げ、そのまま君の鼻先に突きつけた。
「舐めなさい」
そう命じて、女性はいきなりチョコレートの爪先を君の顔、鼻から口にかけての部分に押し付けた。
君はその感触で、顔に爪先が押し付けられたことを知り、瞬間沸騰して手探りでその足の踵を捉えて支えると、チョコレートに彩られた柔らかく甘いその足に舌を伸ばした。
君は腰を半ば浮かせて昂りながら、温かいチョコレートに塗れた女性の足の親指にむしゃぶりつき、一心不乱に舐め続けている。
女性が、身を屈めてソースパンを拾い上げ、その中身を、脛の辺りから爪先に向けて流す。
注がれるチョコレートが漣のように押し寄せてきて、君は温かく甘いそれに塗れていく。
そして君の唇から溢れたチョコレートは静かに顎を伝い、ゆっくりと体を流れ落ちていく。
2005-08-22
流星の町
真夜中のカーテン
踏み切りの先のなだらかな坂を下る
濡れる窓辺
禍々しい風
絶望が歪む
口に含んだ氷が溶けていく
遠い雷鳴
足元の乱れた淡い光
濃密な闇を引き裂く一閃
絶叫はラプソディ
無口なグラス
歩いてほんの数分の距離
群青色の快感
指先の戯れは気まぐれ
遮る困惑
短気な背骨
寝台列車のメランコリー
明日を踏みにじる
流星の町
唇の謎
傷跡に沁みる
太陽と月のせめぎ合い
朝と夜の攻防
理性と煩悩の駆け引き
踏み切りの先のなだらかな坂を下る
濡れる窓辺
禍々しい風
絶望が歪む
口に含んだ氷が溶けていく
遠い雷鳴
足元の乱れた淡い光
濃密な闇を引き裂く一閃
絶叫はラプソディ
無口なグラス
歩いてほんの数分の距離
群青色の快感
指先の戯れは気まぐれ
遮る困惑
短気な背骨
寝台列車のメランコリー
明日を踏みにじる
流星の町
唇の謎
傷跡に沁みる
太陽と月のせめぎ合い
朝と夜の攻防
理性と煩悩の駆け引き
2005-08-09
西へ
最終の下り『のぞみ』。
座席はほぼ埋まっている。
君は車両中央付近の、窓際の席に座っている。
外は暗く、強化プラスチックの窓には車内の様子が白く映っている。
満席に近い状態なのに、車内はとても静かだ。
大半の人が、本や雑誌を読んだり、ヘッドホンで音楽を聴いたり、目を閉じて眠ったりしている。
君は上着を脱いで、それを下半身に掛けている。
しかし眠ってはいない。
じっと窓の外の闇を見つめている。
そして隣の座席には、薄いスモークのサングラスをかけた美しい女性が座っている。
その女性が、つと窓のほうへ顔を向けた。
白い反射の中で君と目が合う。
しかし、君はすぐに視線を外してしまう。
女性に見つめられることに、君は慣れていないのだ。
彼女は長い脚を組みかえると、右手を、テーブルに置かれたコーヒーの紙コップへ伸ばした。
そしてそれをゆっくりと一口飲む。
君は、そんな彼女の隣の座席で、体を硬直させている。
彼女の左手は、さっきからずっと、君の腰に掛けた上着の下へ伸びている。
その手は、君のズボンのジッパーを下ろし、中から性器を引っ張り出して握っている。
ただ単に握っているだけではない。
彼女は、周囲に気づかれないよう、君のペニスを握るその手を、小刻みに上下させているのだ。
むろん、君のペニスは、上着に隠された下で既に完璧にいきり立っている。
彼女の手は、その君のペニスを絶妙なリズムで刺激し続けている。
たまらず君は時々腰を浮かしそうになってしまうが、その度に、彼女が長い爪の先を亀頭に食い込ませて堪えさせる。
君は一瞬だけ顔を歪ませるが、すぐに何気ない表情を取り繕う。
そして再び快感が君を包み込む。
君は軽く目を閉じ、その刺激に溺れていく。
『のぞみ』は、強引なスピードで闇を切り裂き、西へ向かっている。
座席はほぼ埋まっている。
君は車両中央付近の、窓際の席に座っている。
外は暗く、強化プラスチックの窓には車内の様子が白く映っている。
満席に近い状態なのに、車内はとても静かだ。
大半の人が、本や雑誌を読んだり、ヘッドホンで音楽を聴いたり、目を閉じて眠ったりしている。
君は上着を脱いで、それを下半身に掛けている。
しかし眠ってはいない。
じっと窓の外の闇を見つめている。
そして隣の座席には、薄いスモークのサングラスをかけた美しい女性が座っている。
その女性が、つと窓のほうへ顔を向けた。
白い反射の中で君と目が合う。
しかし、君はすぐに視線を外してしまう。
女性に見つめられることに、君は慣れていないのだ。
彼女は長い脚を組みかえると、右手を、テーブルに置かれたコーヒーの紙コップへ伸ばした。
そしてそれをゆっくりと一口飲む。
君は、そんな彼女の隣の座席で、体を硬直させている。
彼女の左手は、さっきからずっと、君の腰に掛けた上着の下へ伸びている。
その手は、君のズボンのジッパーを下ろし、中から性器を引っ張り出して握っている。
ただ単に握っているだけではない。
彼女は、周囲に気づかれないよう、君のペニスを握るその手を、小刻みに上下させているのだ。
むろん、君のペニスは、上着に隠された下で既に完璧にいきり立っている。
彼女の手は、その君のペニスを絶妙なリズムで刺激し続けている。
たまらず君は時々腰を浮かしそうになってしまうが、その度に、彼女が長い爪の先を亀頭に食い込ませて堪えさせる。
君は一瞬だけ顔を歪ませるが、すぐに何気ない表情を取り繕う。
そして再び快感が君を包み込む。
君は軽く目を閉じ、その刺激に溺れていく。
『のぞみ』は、強引なスピードで闇を切り裂き、西へ向かっている。
2005-07-27
真夏のオン・ザ・ビーチ
強烈な真夏の太陽が垂直に降り注いでいる。
白い砂浜の表面は熱く、影の部分はどこにもない。
波は穏やかで、ビーチはほぼ無人だ。
水平線は丸く、彼方に入道雲がもくもくと湧きあがっている。
よく晴れて気温の高い、完璧な夏の日だ。
遠くに、海の家がぽつんと見える。
風は殆ど吹いていない。
そのため、ひどく暑い。
君は、そんな暑さの中、首から上だけを露出させて砂に埋まっている。
しかも、埋まっているといっても、横になっているわけではない。
縦に深く掘られた穴に、正坐をして埋まっているのだ。
君はその穴を自分で掘った。
もちろん、それだけの穴を掘ることは大変な労力を要したが、君はそれを全部ひとりで完遂した。
自分で自分のための穴を掘り、自分でその中に入った。
そして君に砂を被せていったのは、今、君の周囲に立っている三人の女性達だった。
三人とも若くて美しく、素晴らしいプロポーションを誇っていて、しかも鮮烈なまでに挑発的な原色のビキニを着ている。
その三人が、君を埋めた。
君は砂の中から、三人の女性達を見上げている。
女性達は、君を取り囲むように立っていて、微笑を浮かべながら見下ろしている。
君は暑さのため、額に玉のような汗をかいているが、腕も完全に埋まっているのでそれを拭うことはできないでいる。
手は砂の中で、畳んだ太腿の上にある。
そんな君を滑稽そうに、憐憫の目で悠然と見下ろしながら、女性のひとりが言った。
「さて」
笑いながらそう言うと、その女性はおもむろに君の頭を跨いで立ち、ビキニのショーツを下ろした。
君は思わずごくりと生唾を飲み込んで、その艶やかな陰毛に彩られた女性の股間を見上げてしまう。
すると、次の瞬間、その女性は君を跨いで腕組みをしたまま、仁王立ちでいきなり放尿を始めた。
それは凄まじい勢いで、君の頭頂部、そして顔面を濡らした。
君は眼を閉じ、それを浴び続けた。
砂に埋められているため、逃げることも、もがくこともできなかった。
君は無力に、ひたすら尿を浴び続けた。
ひとりが放尿を終えると、すぐに次の女性が君を跨いだ。
そして君を覗き込み、命じた。
「ほら、上を向いて大きく口を開けて、ちゃんと飲むのよ」
そう言って、その女性は放尿を開始した。
君は命じられたとおりに顎を上向かせて大きく口を開け、その問答無用で注ぎ込まれていく液体を口で受けたが、たちまち咽て、ごぼごぼと溢れさせてしまった。
女性は怒り、放尿後、ビーチサンダルの足の裏で君の頭を、そして頬を踏み潰した。
結局、君は次々に三人の尿を浴び、そして飲んだ。
君はもう、砂から出ている部分がずぶ濡れだ。
しかも、周囲の砂も三人分の尿をたっぷりと吸い込み、黒く濡れてしまっている。
君の周辺には、真夏の暑い空気に攪拌されてさらに増幅された強烈なアンモニア臭が立ち込めた。
それは、夕立の後の濡れたアスファルトを君に連想させた。
三人の女性は再びショーツを身につけて、君を取り囲んで見下ろしながら高らかに笑っている。
君は照れたようにはにかみ、目を細めて女性たちを見上げた。
君の視界は、髪の毛を伝い、額を流れ、睫毛の先端に付着した金色の雫の破片によって、キラキラと輝く煌びやかな光に彩られている。
白い砂浜の表面は熱く、影の部分はどこにもない。
波は穏やかで、ビーチはほぼ無人だ。
水平線は丸く、彼方に入道雲がもくもくと湧きあがっている。
よく晴れて気温の高い、完璧な夏の日だ。
遠くに、海の家がぽつんと見える。
風は殆ど吹いていない。
そのため、ひどく暑い。
君は、そんな暑さの中、首から上だけを露出させて砂に埋まっている。
しかも、埋まっているといっても、横になっているわけではない。
縦に深く掘られた穴に、正坐をして埋まっているのだ。
君はその穴を自分で掘った。
もちろん、それだけの穴を掘ることは大変な労力を要したが、君はそれを全部ひとりで完遂した。
自分で自分のための穴を掘り、自分でその中に入った。
そして君に砂を被せていったのは、今、君の周囲に立っている三人の女性達だった。
三人とも若くて美しく、素晴らしいプロポーションを誇っていて、しかも鮮烈なまでに挑発的な原色のビキニを着ている。
その三人が、君を埋めた。
君は砂の中から、三人の女性達を見上げている。
女性達は、君を取り囲むように立っていて、微笑を浮かべながら見下ろしている。
君は暑さのため、額に玉のような汗をかいているが、腕も完全に埋まっているのでそれを拭うことはできないでいる。
手は砂の中で、畳んだ太腿の上にある。
そんな君を滑稽そうに、憐憫の目で悠然と見下ろしながら、女性のひとりが言った。
「さて」
笑いながらそう言うと、その女性はおもむろに君の頭を跨いで立ち、ビキニのショーツを下ろした。
君は思わずごくりと生唾を飲み込んで、その艶やかな陰毛に彩られた女性の股間を見上げてしまう。
すると、次の瞬間、その女性は君を跨いで腕組みをしたまま、仁王立ちでいきなり放尿を始めた。
それは凄まじい勢いで、君の頭頂部、そして顔面を濡らした。
君は眼を閉じ、それを浴び続けた。
砂に埋められているため、逃げることも、もがくこともできなかった。
君は無力に、ひたすら尿を浴び続けた。
ひとりが放尿を終えると、すぐに次の女性が君を跨いだ。
そして君を覗き込み、命じた。
「ほら、上を向いて大きく口を開けて、ちゃんと飲むのよ」
そう言って、その女性は放尿を開始した。
君は命じられたとおりに顎を上向かせて大きく口を開け、その問答無用で注ぎ込まれていく液体を口で受けたが、たちまち咽て、ごぼごぼと溢れさせてしまった。
女性は怒り、放尿後、ビーチサンダルの足の裏で君の頭を、そして頬を踏み潰した。
結局、君は次々に三人の尿を浴び、そして飲んだ。
君はもう、砂から出ている部分がずぶ濡れだ。
しかも、周囲の砂も三人分の尿をたっぷりと吸い込み、黒く濡れてしまっている。
君の周辺には、真夏の暑い空気に攪拌されてさらに増幅された強烈なアンモニア臭が立ち込めた。
それは、夕立の後の濡れたアスファルトを君に連想させた。
三人の女性は再びショーツを身につけて、君を取り囲んで見下ろしながら高らかに笑っている。
君は照れたようにはにかみ、目を細めて女性たちを見上げた。
君の視界は、髪の毛を伝い、額を流れ、睫毛の先端に付着した金色の雫の破片によって、キラキラと輝く煌びやかな光に彩られている。
2005-07-19
バスを待ちながら
港町、温い風
薄曇りの午後
今夜遅くには台風が上陸する
湿度は高い
なだらかな坂道の下
防波堤の気だるい影
無人の県道
バス停に、日傘の女性がひとり
夏のワンピース
軽いサンダル
淡色のサングラス
赤い爪
昨日という名の遠い未来
きわめて個人的な事情
感傷を断ち切るため
追憶のニューロン
快楽のシナプス
傍らに置いた小型のスーツケース
その中身は、謎
そしてあなたは、秘密の人
薄曇りの午後
今夜遅くには台風が上陸する
湿度は高い
なだらかな坂道の下
防波堤の気だるい影
無人の県道
バス停に、日傘の女性がひとり
夏のワンピース
軽いサンダル
淡色のサングラス
赤い爪
昨日という名の遠い未来
きわめて個人的な事情
感傷を断ち切るため
追憶のニューロン
快楽のシナプス
傍らに置いた小型のスーツケース
その中身は、謎
そしてあなたは、秘密の人
2005-07-14
金曜日の冒険
ほんの幼い子供の頃、通学路から一本外れた路地は、未知の空間だった。
この角を曲がると、先にはどんな世界が広がっているのだろう?
そう思いながら、しかし通い慣れた道に差し込む夕陽は、優しくいつもの場所を照らし続けていた。
その道から外れることに憧れはあったが、同時に恐くもあった。
もう二度といつもの場所には戻れないような気がして、小さな交叉点では目を強く瞑り、その憧憬を振り払うように急ぎ足で駆け抜けた。
君はそのようにして大人になった。
何かに導かれているという自覚はなかったが、何かを切実に求めて、そのためにシビアな選択を迫られてきたわけでもない。
邪悪なものはいつも、すぐそばにあった。
ただ、それには近づかなかった。
もしかしたらそれは邪悪ではなく、さらなる福音を告げるものだったかもしれないが、君は、いったん道を外れてしまったらもう戻れなくなるのではないか、という恐怖が払拭できず、誘惑は見てみぬ振りをしてクールにやり過ごした。
世の中は破廉恥で、様々な誘惑に満ちている。
商品化された『性』がメディアには氾濫している。
挑発的な女の子たちが、刺激的なヘッドラインを従えて妖艶な微笑を振りまいている。
君は二時間の残業を終えて、インターネット・カフェに入った。
夕食はインスタントヌードルで済ませた。
味気ない食事だが、とりあえず腹は膨れるし、何より安上がりだ。
君は週末の夜、ネットカフェでコンピュータと向き合う。
そしてブラウザを立ち上げてネットに接続し、パスワードを入力して自分専用のオンライン・ブックマークへアクセスする。
そこには、君の暗い欲望を静かに煽動する、おびただしい数のアダルトサイトが登録してある。
君は今夜、ささやかな決意を胸に秘めていた。
それは、今夜こそSMクラブへ行こう、と思っていたのだ。
君はこれまで自分でそれを認めてこなかったが、どうやらマゾヒストであるらしかった。
女性から辱められることに、異様な興奮を覚えるのだ。
いつからそういう指向になったのか、その時期は定かではない。
しかしこの数年、君はその願望と戦い続けていた。
このような嗜好は、当たり前の男性として間違っている、そう思っていたのだ。
それでも、もう限界だった。
そろそろそれを認めなければならない頃合かもしれない、と君は最近そう思い始めていた。
もう何十回となくチェックしているSMクラブのウェブサイトを開く。
そのサイトには、在籍している女性の写真が豊富にあり、欲望を刺激する様々なキーワードが鏤められている。
クラブへ行くなら、初めてのときはここにしよう、と君は決めていた。
理由は、いくつかあった。
ひとつは、場所が比較的、自分の生活圏に近く、馴染みがあること。
そしてもうひとつは、写真で見る限りだが、自分好みの女性が何人か在籍しているからだ。
君は緊張しながらサイト内を移動し、在籍女性のプロフィールを見ていく。
今夜の君にとって、もっとも重要なチェック項目は出勤日だ。
君は上着の内ポケットから手帳を取り出して、金曜日のこの時間に出勤している女性の名前を書きとめていく。
そして最後にクラブの電話番号を書き写し、何度も確認してからその手帳を閉じ、ポケットに戻した。
果たして、どんな経験が待ち受けているのか。
それを思うと、たまらなく緊張した。
しかし、もう決めたのだ。
このネットカフェを出たらクラブに電話をし、予約をする。
そうすれば数時間後には、これまで長い間ひとりで夢想してきた暗く眩い世界が目の前に開けるのだ。
それは君にとって未知の場所だ。
子供の頃は恐くて、通学路から外れる路地へ足を踏み入れることは出来なかったが、そろそろ目を開いてその角を曲がってみてもいいだろう。
君は、これから自分が旅立とうとしている金曜日の夜のささやかな冒険に、心を震わせた。
君はブラウザを閉じ、椅子の背凭れに背中を預けて力を抜いた。
そしてキーボードの脇に置いてあるマグカップに手を伸ばし、温くなってしまったコーヒーを一口飲む。
この角を曲がると、先にはどんな世界が広がっているのだろう?
そう思いながら、しかし通い慣れた道に差し込む夕陽は、優しくいつもの場所を照らし続けていた。
その道から外れることに憧れはあったが、同時に恐くもあった。
もう二度といつもの場所には戻れないような気がして、小さな交叉点では目を強く瞑り、その憧憬を振り払うように急ぎ足で駆け抜けた。
君はそのようにして大人になった。
何かに導かれているという自覚はなかったが、何かを切実に求めて、そのためにシビアな選択を迫られてきたわけでもない。
邪悪なものはいつも、すぐそばにあった。
ただ、それには近づかなかった。
もしかしたらそれは邪悪ではなく、さらなる福音を告げるものだったかもしれないが、君は、いったん道を外れてしまったらもう戻れなくなるのではないか、という恐怖が払拭できず、誘惑は見てみぬ振りをしてクールにやり過ごした。
世の中は破廉恥で、様々な誘惑に満ちている。
商品化された『性』がメディアには氾濫している。
挑発的な女の子たちが、刺激的なヘッドラインを従えて妖艶な微笑を振りまいている。
君は二時間の残業を終えて、インターネット・カフェに入った。
夕食はインスタントヌードルで済ませた。
味気ない食事だが、とりあえず腹は膨れるし、何より安上がりだ。
君は週末の夜、ネットカフェでコンピュータと向き合う。
そしてブラウザを立ち上げてネットに接続し、パスワードを入力して自分専用のオンライン・ブックマークへアクセスする。
そこには、君の暗い欲望を静かに煽動する、おびただしい数のアダルトサイトが登録してある。
君は今夜、ささやかな決意を胸に秘めていた。
それは、今夜こそSMクラブへ行こう、と思っていたのだ。
君はこれまで自分でそれを認めてこなかったが、どうやらマゾヒストであるらしかった。
女性から辱められることに、異様な興奮を覚えるのだ。
いつからそういう指向になったのか、その時期は定かではない。
しかしこの数年、君はその願望と戦い続けていた。
このような嗜好は、当たり前の男性として間違っている、そう思っていたのだ。
それでも、もう限界だった。
そろそろそれを認めなければならない頃合かもしれない、と君は最近そう思い始めていた。
もう何十回となくチェックしているSMクラブのウェブサイトを開く。
そのサイトには、在籍している女性の写真が豊富にあり、欲望を刺激する様々なキーワードが鏤められている。
クラブへ行くなら、初めてのときはここにしよう、と君は決めていた。
理由は、いくつかあった。
ひとつは、場所が比較的、自分の生活圏に近く、馴染みがあること。
そしてもうひとつは、写真で見る限りだが、自分好みの女性が何人か在籍しているからだ。
君は緊張しながらサイト内を移動し、在籍女性のプロフィールを見ていく。
今夜の君にとって、もっとも重要なチェック項目は出勤日だ。
君は上着の内ポケットから手帳を取り出して、金曜日のこの時間に出勤している女性の名前を書きとめていく。
そして最後にクラブの電話番号を書き写し、何度も確認してからその手帳を閉じ、ポケットに戻した。
果たして、どんな経験が待ち受けているのか。
それを思うと、たまらなく緊張した。
しかし、もう決めたのだ。
このネットカフェを出たらクラブに電話をし、予約をする。
そうすれば数時間後には、これまで長い間ひとりで夢想してきた暗く眩い世界が目の前に開けるのだ。
それは君にとって未知の場所だ。
子供の頃は恐くて、通学路から外れる路地へ足を踏み入れることは出来なかったが、そろそろ目を開いてその角を曲がってみてもいいだろう。
君は、これから自分が旅立とうとしている金曜日の夜のささやかな冒険に、心を震わせた。
君はブラウザを閉じ、椅子の背凭れに背中を預けて力を抜いた。
そしてキーボードの脇に置いてあるマグカップに手を伸ばし、温くなってしまったコーヒーを一口飲む。
2005-06-26
Kiss Me
雨の中の希望
虹の始まる場所
個人的な事情
正義の不在
殺意に満ちた街
不安に踊る雑踏
国王の気まぐれ
愛しているなんて、死んでも言わない
めくるめく屈辱
荒野に沈む幻の月
制御不�
アイデンティティという名の罠
屯田兵の憂鬱
語りたがる人の群れの中を泳ぐ
勧善懲悪の安心感
どうかキスしてください
擬人化されたテクノロジー
虹の始まる場所
個人的な事情
正義の不在
殺意に満ちた街
不安に踊る雑踏
国王の気まぐれ
愛しているなんて、死んでも言わない
めくるめく屈辱
荒野に沈む幻の月
制御不�
アイデンティティという名の罠
屯田兵の憂鬱
語りたがる人の群れの中を泳ぐ
勧善懲悪の安心感
どうかキスしてください
擬人化されたテクノロジー
2005-06-22
紫色の瞳
彼女はとても野性的だ。
獰猛な獣のような、しなやかな肢体に、サディスティックな雰囲気を纏っている。
君は、そんな彼女に支配されている。
彼女の瞳は、紫色だ。
そのカラーコンタクトの瞳に見つめられる度、君は自分の矮小さを自覚する。
君は今、彼女の前で跪いている。
地面に近い位置から見上げる彼女は、神々しい。
よく陽に焼けた褐色の肌は艶かしく、威圧的な脚が君の前に聳えている。
君は、彼女の奴隷だ。
彼女の命令は君にとって絶対であり、服従は権利であると同時に義務でもある。
彼女の脚は、踵の高い赤いハイヒールで完結している。
そのヒールの底が、君の頭に置かれた。
君は床に額を擦りつけるようにして平伏し、その感触を受け止める。
彼女は、足に力を込め、君を踏みにじる。
君は、されるがままだが、それは至福の瞬間でもある。
マゾヒストである君にとって、屈辱は快楽だ。
美しい支配者に踏まれて、君はこのうえない幸福を感じている。
彼女は、君の頭から足を下ろした。
そして、そのまましゃがむと、おもむろに君の顎に手を掛けて前を向かせる。
君は至近距離で紫色の瞳と対峙する。
その瞳には全く感情が滲んではいない。
それは、人間を見る目ではない。
彼女にとって、君は一匹の奴隷であり、人間ではない。
だからその瞳に何の感情も現れていないのは、至極当然のことだ。
濡れたように光る彼女の唇がほんの僅かに開いて、その隙間から真っ赤な舌の先が覗く。
彼女は、その爬虫類のような舌を蠢かせながら、少しだけ唇を舐めてみせる。
その官能的な動作に、君の緊張は一気に高まる。
君は吸い寄せられるように、その赤い舌の先端を見つめる。
やがて彼女は再び舌を唇の中に収めた。
そしていきなり、冷徹な眼で君を見据えたまま、強く君の頬を掌で張った。
乾いた音が室内に響く。
君は歯を食い縛ってその痺れるような衝撃に耐えた。
彼女は、続けざまに何発も連続して君の頬を張った。
見る間に君の両頬が、まるで猿の尻のように赤く腫れ上がっていく。
しかし依然として彼女の紫色の瞳には、何の感情も浮かんでいない。
まるで純度の高い宝石のような聡明な光をただ静かに湛えているだけだ。
獰猛な獣のような、しなやかな肢体に、サディスティックな雰囲気を纏っている。
君は、そんな彼女に支配されている。
彼女の瞳は、紫色だ。
そのカラーコンタクトの瞳に見つめられる度、君は自分の矮小さを自覚する。
君は今、彼女の前で跪いている。
地面に近い位置から見上げる彼女は、神々しい。
よく陽に焼けた褐色の肌は艶かしく、威圧的な脚が君の前に聳えている。
君は、彼女の奴隷だ。
彼女の命令は君にとって絶対であり、服従は権利であると同時に義務でもある。
彼女の脚は、踵の高い赤いハイヒールで完結している。
そのヒールの底が、君の頭に置かれた。
君は床に額を擦りつけるようにして平伏し、その感触を受け止める。
彼女は、足に力を込め、君を踏みにじる。
君は、されるがままだが、それは至福の瞬間でもある。
マゾヒストである君にとって、屈辱は快楽だ。
美しい支配者に踏まれて、君はこのうえない幸福を感じている。
彼女は、君の頭から足を下ろした。
そして、そのまましゃがむと、おもむろに君の顎に手を掛けて前を向かせる。
君は至近距離で紫色の瞳と対峙する。
その瞳には全く感情が滲んではいない。
それは、人間を見る目ではない。
彼女にとって、君は一匹の奴隷であり、人間ではない。
だからその瞳に何の感情も現れていないのは、至極当然のことだ。
濡れたように光る彼女の唇がほんの僅かに開いて、その隙間から真っ赤な舌の先が覗く。
彼女は、その爬虫類のような舌を蠢かせながら、少しだけ唇を舐めてみせる。
その官能的な動作に、君の緊張は一気に高まる。
君は吸い寄せられるように、その赤い舌の先端を見つめる。
やがて彼女は再び舌を唇の中に収めた。
そしていきなり、冷徹な眼で君を見据えたまま、強く君の頬を掌で張った。
乾いた音が室内に響く。
君は歯を食い縛ってその痺れるような衝撃に耐えた。
彼女は、続けざまに何発も連続して君の頬を張った。
見る間に君の両頬が、まるで猿の尻のように赤く腫れ上がっていく。
しかし依然として彼女の紫色の瞳には、何の感情も浮かんでいない。
まるで純度の高い宝石のような聡明な光をただ静かに湛えているだけだ。
2005-06-04
イン・ザ・ケージ
巨大な檻だ。
縦、横、高さ、それぞれ一辺が三メートルほどはある。
それはサーカス団が、象やライオンを入れておくために使っている檻のようだ。
君は今、その檻のほぼ中央に、一人で立っている。
黒い鉄の格子が天井の蛍光灯を浴びて艶やかに光っている。
君は、両手は背中に回されて手錠をかけられ、その手錠は両足首を縛った足枷に鎖で繋がっている。
衣服は何も身に着けていない。
全くの全裸だ。
剥き出しの性器は萎え、空気が冷えているため、君は小さく震えている。
繋がれているわけではないので、檻の中であれば自由に動き回ることはできるのだが、なぜか君は動かない。
いや、動けない。
床は板張りで、君と格子の影だけが重なり合って淡く落ちている。
この檻は、一見サーカスのそれのようだが、細部まで目を配ると少々違うようだ。
天井には滑車がいくつかあって鎖が垂れているし、出入り口らしき扉の高さも、人間の背丈ほどしかない。
そして君から見て左側の面には、細長い頑丈な板を二枚組み合わせて作られた十字の磔台もある。
その板のそれぞれの先端には、短い鎖で繋がれた革のベルトがぶら下がっている。
檻が設置されているこの部屋は、がらんとしていて、広い。
そして君以外は誰もいない。
多分、倉庫か工場の跡地だろう。
なんとなく埃っぽいし、高い位置に、明かり取りらしい小窓がある。
しかし、その外は暗い。
夜だ。
檻から外へ出ることは不可能のようだ。
唯一の出入り口らしき扉には鍵がかけられていて、格子の外側に取り付けられた巨大な南京錠が、無言のまま君を威圧している。
人の気配は全くなく、空気はそよとも動いていない。
ただそこには檻があり、その中に君がいるだけだ。
そして、静寂。
縦、横、高さ、それぞれ一辺が三メートルほどはある。
それはサーカス団が、象やライオンを入れておくために使っている檻のようだ。
君は今、その檻のほぼ中央に、一人で立っている。
黒い鉄の格子が天井の蛍光灯を浴びて艶やかに光っている。
君は、両手は背中に回されて手錠をかけられ、その手錠は両足首を縛った足枷に鎖で繋がっている。
衣服は何も身に着けていない。
全くの全裸だ。
剥き出しの性器は萎え、空気が冷えているため、君は小さく震えている。
繋がれているわけではないので、檻の中であれば自由に動き回ることはできるのだが、なぜか君は動かない。
いや、動けない。
床は板張りで、君と格子の影だけが重なり合って淡く落ちている。
この檻は、一見サーカスのそれのようだが、細部まで目を配ると少々違うようだ。
天井には滑車がいくつかあって鎖が垂れているし、出入り口らしき扉の高さも、人間の背丈ほどしかない。
そして君から見て左側の面には、細長い頑丈な板を二枚組み合わせて作られた十字の磔台もある。
その板のそれぞれの先端には、短い鎖で繋がれた革のベルトがぶら下がっている。
檻が設置されているこの部屋は、がらんとしていて、広い。
そして君以外は誰もいない。
多分、倉庫か工場の跡地だろう。
なんとなく埃っぽいし、高い位置に、明かり取りらしい小窓がある。
しかし、その外は暗い。
夜だ。
檻から外へ出ることは不可能のようだ。
唯一の出入り口らしき扉には鍵がかけられていて、格子の外側に取り付けられた巨大な南京錠が、無言のまま君を威圧している。
人の気配は全くなく、空気はそよとも動いていない。
ただそこには檻があり、その中に君がいるだけだ。
そして、静寂。
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