2005-06-04

イン・ザ・ケージ

巨大な檻だ。
縦、横、高さ、それぞれ一辺が三メートルほどはある。
それはサーカス団が、象やライオンを入れておくために使っている檻のようだ。
君は今、その檻のほぼ中央に、一人で立っている。
黒い鉄の格子が天井の蛍光灯を浴びて艶やかに光っている。

君は、両手は背中に回されて手錠をかけられ、その手錠は両足首を縛った足枷に鎖で繋がっている。
衣服は何も身に着けていない。
全くの全裸だ。
剥き出しの性器は萎え、空気が冷えているため、君は小さく震えている。
繋がれているわけではないので、檻の中であれば自由に動き回ることはできるのだが、なぜか君は動かない。
いや、動けない。
床は板張りで、君と格子の影だけが重なり合って淡く落ちている。

この檻は、一見サーカスのそれのようだが、細部まで目を配ると少々違うようだ。
天井には滑車がいくつかあって鎖が垂れているし、出入り口らしき扉の高さも、人間の背丈ほどしかない。
そして君から見て左側の面には、細長い頑丈な板を二枚組み合わせて作られた十字の磔台もある。
その板のそれぞれの先端には、短い鎖で繋がれた革のベルトがぶら下がっている。

檻が設置されているこの部屋は、がらんとしていて、広い。
そして君以外は誰もいない。
多分、倉庫か工場の跡地だろう。
なんとなく埃っぽいし、高い位置に、明かり取りらしい小窓がある。
しかし、その外は暗い。
夜だ。

檻から外へ出ることは不可能のようだ。
唯一の出入り口らしき扉には鍵がかけられていて、格子の外側に取り付けられた巨大な南京錠が、無言のまま君を威圧している。
人の気配は全くなく、空気はそよとも動いていない。
ただそこには檻があり、その中に君がいるだけだ。

そして、静寂。

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