2008-01-12

バスルームの孤独

さして広くないバスルームの床はタイル敷きで、その床も壁もバスタブも、あらゆる部分が白い。
しかも小さな窓の外は夜で、無機質な蛍光灯が天井で白い光を放っているため、その白さは人工的に増幅されている。
タイルの床は冷たい。
冷たいというより、凍えるくらいに冷えきっている。
そもそも、バスルーム自体が、完全な冷気に包まれている。

君は今、そんな冷たいバスルームの床に、全裸で跪いている。
手のひらと膝と爪先から、冷気が這い上がってきていて、全身に鳥肌を立てながら、小さく震えている。
奥歯がガチガチと鳴っている。

君の首には、赤い革製の首輪が巻かれている。
そして繋がっているリードは前方へと伸び、そこには美しい女性が凛然と立っている。
女性は、普段着姿だ。
厚手のウールのスカートに、タートルネックのセーターを着ている。
スカートはグレーで、セーターはオレンジ色だ。
女性はリードを持ちながら軽く腕を組み、君を見下ろしているが、全裸で跪いている君の姿は、普段着の女性との対比でいっそう貧相に見える。

「どうして震えているの?」

女性が首を傾げて不思議そうに訊く。
君は手を床についたまま首を反らせて女性を見上げ、こたえる。

「寒いです」

その声も震えている。
しかし女性は微笑むだけだ。

「でもおまえは犬だから、仕方ないんじゃない? かわいがられているペットならともかく、いくら寒くても、ペットでも何でもなくただの犬でしかないおまえが服を着るなんて生意気でしょう?」
「はい……」

君はこくりと頷く。
それを見て、女性が言う。

「じゃあせめて、温かい飲み物でも上げようかしら?」
「お願いします」

君が床に額をつけて懇願すると、女性はフンと鼻で笑い、おもむろにスカートをたくしあげると、ショーツを下ろした。
そして、軽く脚を開く。

「いまからオシッコしてあげるから、床に溢れたものを舐めて飲みなさい。犬らしくね」
「はい」

そう言って女性は立ったまま放尿した。
股間の茂みの奥から黄金色に輝く液体が迸り、床に飛沫く。
尿は、白く微かな湯気を立ち昇らせながら、タイルの表面を流れ、溜まっていく。
強いアンモニア臭が立ち込め、君の鼻腔を刺激する。
温かい尿がタイルの目地に沿って流れ、君の手のひらや膝を濡らしていく。
しかし君は動かない。
白いタイルが金色に染まっていく。

やがて放尿が終わり、女性は腕を組んで立ったまま、君を見下ろす。

「飲みなさい」

リードを引っ張り、君を尿の溜まりへと誘う。

「ありがとうございます!」

君は歓喜し、尻を上げてその尿に屈み込む。
手のひらも尿の中だ。
そして君は舌を這わせ、早くも温もりをなくしつつある尿を、音を立てて舐めとっていく。

女性が嘲笑を浮かべながら、床に這いつくばって尿を飲んでいる君の頭を踏む。
君は踏まれ、そして軽蔑と憐憫の視線に貫かれながら、尚も必死に啜り続ける。

そんな君のペニスは完全にそそり立っている。

2 comments:

Anonymous said...

主従関係の何たるかを端的に表されている作品だという印象を受けました。
屈辱の中で感じてしまうのは、やはりMの性なのでしょうね。
この後の展開もいろいろと想像させられました。

n.k said...

M男が屈辱感にワナワナと震えながらも感じてしまう、という状況が個人的にあんがい好きなので、ぼくが書くものにはこういうパターンが多いかもしれません。