2004-10-13

君は今、手首を縛られた状態で両手を上げ、赤いロープで天井から吊るされている。
床に足はついているが、体の自由はほとんど利かない。
もちろん全身に亀甲縛りが施されており、その模様は芸術的ですらある。
君は、オブジェだ。
天井のスポットライトが君を照らしている。
その光に、乳首のピアスが鈍い煌めきを放つ。
ピアスはリング状で、細いチェーンがついている。
そのチェーンは長く、両の乳首から伸びるそれは途中で繋がり、先端は女王様の手の中にある。

女王様が残忍な微笑を瞳に滲ませながら、一片の躊躇もなく、そのチェーンを引っ張った。
「ギャー」
君は大の大人であるにもかかわらず、生まれたての赤子のように叫ぶ。
その目は涙で潤んでいる。
「おまえ、嬉しくて泣いてるの?」
女王様が近づいてきて、感情を消した顔で小首を傾げながら訊く。
君は痛みに顔を顰めながら、しかし「はい」と頷く。
「でも何か不快そうね。あまり嬉しそうには見えないわよ」
女王様はそう言うと、冷徹な目で君を見据えた。
君は激しく首を横に振って否定する。
「いいえ、滅相もございません。本当に嬉しいです!」
君は必死だ。
しかし女王様の手にはいつしか、チェーンの代わりに長い一本鞭が握られている。

「おまえは最低なマゾ豚」

女王様はそう呟くと、鞭を持ったまま君のすぐ前に立ち、君の乳首のピアスを指先で弾いた後、両頬に鋭いビンタを張り、君を小突いた。
君は足首を縛られているので、そのまま、まるでサンドバッグのように揺れる。
その揺れが収まらないうちに、女王様は鞭を振った。
鞭の先端が君の体を打つ。
その乾いた音が、密室に反響する。
君は無意識のうちにその鞭から逃れようと体を捩るが、その度にロープが手首に食い込んで顔を歪める。
何発もの鞭が連続して君に叩き込まれた。
鞭が肌を打つと、君の体に滲んでいた汗が、細かな飛沫となって飛散した。
その汗が、スポットライトの強烈な光を浴びてキラキラと輝く。

やがてようやく鞭の嵐が去った。
君は手首の拘束だけを解かれ、息を弾ませながら床にしゃがみこむ。
亀甲縛りが施されたままの全身には、鞭の跡が刻まれている。
君は這い蹲るように床に両手をつき、呼吸を整える。
そんな君の前に、女王様が凛然と立った。
俯き加減の君の視界に、踵の高いハイヒールが現れる。
レザーの光沢は艶かしく、女王様の足首は透き通るように白い。

その踝の上に、小さいが色鮮やかな蝶のタトゥがある。
蝶は静かに、そして優雅に羽を広げている。

No comments: