2005-08-09

西へ

最終の下り『のぞみ』。
座席はほぼ埋まっている。
君は車両中央付近の、窓際の席に座っている。
外は暗く、強化プラスチックの窓には車内の様子が白く映っている。
満席に近い状態なのに、車内はとても静かだ。
大半の人が、本や雑誌を読んだり、ヘッドホンで音楽を聴いたり、目を閉じて眠ったりしている。

君は上着を脱いで、それを下半身に掛けている。
しかし眠ってはいない。
じっと窓の外の闇を見つめている。
そして隣の座席には、薄いスモークのサングラスをかけた美しい女性が座っている。

その女性が、つと窓のほうへ顔を向けた。
白い反射の中で君と目が合う。
しかし、君はすぐに視線を外してしまう。
女性に見つめられることに、君は慣れていないのだ。

彼女は長い脚を組みかえると、右手を、テーブルに置かれたコーヒーの紙コップへ伸ばした。
そしてそれをゆっくりと一口飲む。
君は、そんな彼女の隣の座席で、体を硬直させている。

彼女の左手は、さっきからずっと、君の腰に掛けた上着の下へ伸びている。
その手は、君のズボンのジッパーを下ろし、中から性器を引っ張り出して握っている。
ただ単に握っているだけではない。
彼女は、周囲に気づかれないよう、君のペニスを握るその手を、小刻みに上下させているのだ。
むろん、君のペニスは、上着に隠された下で既に完璧にいきり立っている。
彼女の手は、その君のペニスを絶妙なリズムで刺激し続けている。
たまらず君は時々腰を浮かしそうになってしまうが、その度に、彼女が長い爪の先を亀頭に食い込ませて堪えさせる。
君は一瞬だけ顔を歪ませるが、すぐに何気ない表情を取り繕う。
そして再び快感が君を包み込む。
君は軽く目を閉じ、その刺激に溺れていく。

『のぞみ』は、強引なスピードで闇を切り裂き、西へ向かっている。

No comments: