2006-07-05

DVD

今夜、君は繁華街の裏通りにある、いかにも怪しげなアダルトショップで、『実録』と謳われたSMのDVDを手に入れた。
マゾヒストの君だから、それはもちろん女王様物で、正式なタイトルは『マゾヒストの、とある夜 vol.1』で、その下に、サブタイトルのように『実録・夜の歪んだ欲望』と書かれてあった。
しかし、インディペンデントのレーベルによる製作らしく、聞いたことの無いメーカーの作品だった。
そして、どうやらシリーズ物のようだったが、店頭にはこの『vol.1』しかなかった。
しかもそのDVDは、お世辞にも洗練されているとは言い難いパッケージデザインだった。
イメージ映像のつもりなのか、高層ビルの夜景や鞭などを合成した暗い画像がパッケージに印刷されていたが陳腐だったし、出演者の名前などはなく、タイトルの下に「収録時間90分」と記されていて、ケースの裏面に数点、作品からキャプチャーしたと思われる画像が載っていた。
ただし、その裏面の画像は粒子は荒く、どんな場面なのかはっきりしなかった。
それらの画像は、どこかの部屋で繰り広げられている女王様と奴隷の絡みを切り取ったものだったが、登場人物の顔などはわからない。
それでも、君は妙に心を惹かれた。
そして気がつくと、それをレジに差し出していた。

自宅に戻った君はシャワーを浴び、パジャマに着替えてリラックスしてから、改めてブリーフケースからDVDを取り出した。
夜も更けてそろそろ午前零時に近かったが、今夜中に観よう、と君は思ったのだ。
この頃は残業続きで疲れていたが、そのぶんストレスも溜まっていて、なかなかSMクラブへも行けなかったので、せめてDVDでも観なければ気持が落ち着かなかった。
もう三ヶ月ほどプレイはしていない。
君にとってその期間は充分に長かったが、忙しいし、仕方なかった。

君はテレビとDVDプレイヤーの電源を入れると、ソファから離れてテレビの前の床に移動して胡坐をかき、ヘッドホンを付けてそのコードを接続した。
どうせなら大音量で近所に遠慮なく音声を聴きたいので、HなDVDを観る場合、君は常にヘッドホンを使用する。
窓を閉め切って適当な音量で視聴するぶんには、そんなに気を遣わなくても、べつにその音声が部屋の外へ漏れることはないのだが、これは気分の問題だった。

部屋の明かりは壁の間接照明だけなので適度に薄暗い。
君は買ってきたDVDをケースから出してプレイヤーに挿入する。
そして画面を見つめる。

やがて再生が始まった。
乱暴な編集で、まるでホームビデオみたいだったが、その映像の質感が『実録』の雰囲気を強めてもいた。
黒い背景にタイトルが赤文字で浮かび上がり、それが消えると、本編が始まる。

最初に映ったのは、SMのための部屋のようだった。
カメラが入り口から部屋に入って、無人の室内を映していく。
画面に、その部屋に設置されている様々な装置が映し出されていく。
壁の磔台や、鏡、檻、天井から下がる鎖、ベッド、女王様用の椅子……。
君はそれらを見ながら、「ん?」と思う。
どうも、この部屋を見たことがあるような気がしたのだ。
というか、いつも利用しているSMクラブのプレイルームに、その部屋は酷似していた。
むろん、単なる気のせいという可能性も高かったが、なんとなく同じような気がしてならなかった。
君はDVDのパッケージを手に取り、画面の明かりを頼りに、どこかに撮影場所が記されていないか探した。
しかし、何も書かれていない。
そもそも、出演者のクレジットさえ無いのだ。
君は確認作業を諦めて、意識を画面に戻す。

やがて、画面に、椅子に座る女王様の姿が映し出される。
その女王様を見て、君は「あっ」と思わず声を上げてしまった。
画面の中の女王様は、君が今のところ最後といえる三ヶ月前にSMクラブへ行った時に指名し、相手をしてもらった女性だったのだ。
たぶん間違いない。
どこにも名前が明記されていないから確実とは言い切れなかったが、君には確信が持てた。
君は「ビデオに出たなんて一言も言ってなかったのに」と思いながら、画面を観続ける。
女王様が画面に向かって話しかけている。
その声も、三ヶ月前に聞いたものと同じだ。
そしてカメラを見つめる冷たい眼……あの眼で自分は睨まれたのだ、と君は思う。
いつのまにか君はもう勃起している。
女王様が言う。
「今日はわたしの調教を変態のおまえたちに見せてあげるわ」

再び画面が切り替わる。
今度は固定のようだ。
カメラは、擦りガラスの向こうのバスルームでシャワーを使っている人物の影を映している。
そのシルエットと雰囲気から、それは男だとわかる。
室内の何箇所かにカメラが設置されているらしく、次の瞬間、画面は、椅子に座って手持ち無沙汰な様子で鞭を小さく振るって遊んでいる女王様の姿に切り替わる。
君は画面を観ながら、本当に実録っぽい撮影方法だな、と思う。

数秒後、バスルームから人が出てきた。
女王様が脚を優雅に組んだままそちらに視線を向け、カメラもそれに同調するかのように切り替わって男を捉える。
と、その瞬間、君は我が目を疑った。
なぜなら、バスルームから性器を半ば勃起させながら全裸で出てきた男は、君自身だったのだ。
ズームアップして、君の顔が大きくなる。
モザイクなどの処理は一切行われていない。

「えっ?」

君は声に出して呟き、唖然となる。
信じられない。
本当に自分なのか?
君は大きく目を見開いて画面を凝視しながら激しい混乱に陥っていく。
しかし再生は止まらない。

君は息を止めて画面を凝視する。
画面の中の君が、簡単にバスタオルで体の水滴を拭った後、股間を手で隠しながらおずおずと女王様の前へ歩み寄っていく……。

1 comment:

Anonymous said...

.

We work like a horse.
We eat like a pig.
We like to play chicken.
You can get someone's goat.
We can be as slippery as a snake.
We get dog tired.
We can be as quiet as a mouse.
We can be as quick as a cat.
Some of us are as strong as an ox.
People try to buffalo others.
Some are as ugly as a toad.
We can be as gentle as a lamb.
Sometimes we are as happy as a lark.
Some of us drink like a fish.
We can be as proud as a peacock.
A few of us are as hairy as a gorilla.
You can get a frog in your throat.
We can be a lone wolf.
But I'm having a whale of a time!

You have a riveting web log
and undoubtedly must have
atypical & quiescent potential
for your intended readership.
May I suggest that you do
everything in your power to
honor your encyclopedic/omniscient
Designer/Architect as well
as your revering audience.
As soon as we acknowledge
this Supreme Designer/Architect,
Who has erected the beauteous
fabric of the universe, our minds
must necessarily be ravished with
wonder at this infinate goodness,
wisdom and power.

Please remember to never
restrict anyone's opportunities
for ascertaining uninterrupted
existence for their quintessence.

There is a time for everything,
a season for every activity
under heaven. A time to be
born and a time to die. A
time to plant and a time to
harvest. A time to kill and
a time to heal. A time to
tear down and a time to
rebuild. A time to cry and
a time to laugh. A time to
grieve and a time to dance.
A time to scatter stones
and a time to gather stones.
A time to embrace and a
time to turn away. A time to
search and a time to lose.
A time to keep and a time to
throw away. A time to tear
and a time to mend. A time
to be quiet and a time to
speak up. A time to love
and a time to hate. A time
for war and a time for peace.

Best wishes for continued ascendancy,
Dr. Whoami

P.S. One thing of which I am sure is
that the common culture of my youth
is gone for good. It was hollowed out
by the rise of ethnic "identity politics,"
then splintered beyond hope of repair
by the emergence of the web-based
technologies that so maximized and
facilitated cultural choice as to make
the broad-based offerings of the old
mass media look bland and unchallenging
by comparison."