2005-04-09

スローモーション

君は脱衣室に入り、衣服を脱いでいく。
そして、上半身だけ裸になって、洗面台の鏡を見る。
曇りガラスがはまった扉の向こう、バスルームから湯音が聞こえる。
天井に埋め込まれた柔らかな照明が、君の体を照らす。
君の体には、赤い筋が何本も走っている。
すべて、一時間前に女王様によって刻まれた鞭の跡だ。
君は今夜、一ヶ月ぶりにクラブでプレイをした。
そして、まっすぐ一人暮らしのアパートへ帰ってきた。
時刻はもう午前零時を回り、日付が変わった。

君は鏡の中の自分と対峙する。
そして、そっと乳首に触れてみる。
もう血は止まっているが、針の痕跡は残っている。
乾いた血が薄くカサブタのように肥大した乳首に寄り添っている。
君の乳首は卑猥だ。
長期間にわたって何度となく繰り返し施された調教によって、肉が凝り固まり、肥大してしまっている。
そういえばもう何年もプレイ以外で、人前で裸になったことはないな……と君は思う。
もちろん、こんな乳首を他人に見せられるはずがない。

君は両手で自分の乳首を同時に摘んでみる。
その瞬間、脳裏に、針が乳首を貫通した時の感覚が鮮やかに甦った。


ルーム内の照明を鋭く撥ねる銀色の針の先端が君の乳首に触れる。
その冷たい感触に、君は全身を強張らせる。
やがて、針の先端が肉を刺し、ゆっくりと深く沈められていく。
君は脂汗を全身に滲ませながら、その様子を凝視する。
針は、スローモーションで君のいちばん敏感な部分を貫いていく。
血が、細く一筋、肌を伝って落ちていく。
それは君にとって、生の証だ。
君はその血の感触で、自分が生命体であることを認識する。


君は乳首から手を離した。
いつしか頬が上気している。
君のペニスは、禍々しく屹立している。

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