2004-08-12

ロンリー・プレイ

疲れきって自宅に戻った君は、何気なく時計を見る。
午後11時半。
連夜の残業で君の肉体は疲労のピークにある。
いや、肉体だけではない。神経も相当擦り切れている。
君は上着を脱いでネクタイを解き、シャツのボタンを外しながら寝室に入り、そこで着ていたものを全部脱ぐ。
そしてバスルームへ行き、シャワーを浴びる。

シャワーを終えて、少しだけ気分がほぐれた君は、腰にバスタオルを巻いたまま寝室に戻った。
サイドテーブルの上の電気スタンドの弱い明かりだけを灯し、ベッドに腰掛け、ぼんやりと思う。

クラブへ行って女王様から思いっきりハードな調教を受けたい……と。

しかし、君にはその時間もないし、金もない。
社内には未だリストラの嵐が吹き荒れていて、正直、我が身の行く末さえ油断できない状況だ。
いや、我が身もそうだが、会社自体が怪しいもので気が抜けない。
業績は下降の一途を辿っており、夏のボーナスも大幅にカットされた。
こんな状況では、おちおちクラブへも行けない。
しかし君は筋金入りのマゾヒストだから、最低でも月に一度は女王様に鞭を打たれ、聖水を口にしないと精神のバランスが保てない。

人は言う。
「いい加減、オンナでも作れよ」と。
しかし、君にとってそれはとても難しい問題だ。
なぜなら君はマゾヒストだし、何より、見た目が醜い。
いわゆるチビデブで、女性にはまるで縁がない。
その見た目が災いしてか、君はこれまで一度も女性と付き合った経験がない。
付き合った経験どころか、実は未だ童貞で、女王様の唾や聖水を飲んだことはあっても、女性とキスをしたことはない。
足の指は舐めても、乳首を吸った経験はない。
それでも、君にとってそれはたいして重要な問題ではなかった。
君は、女性とセックスをするより、美人OLに取り囲まれて自慰を強制され、嘲笑われることを望む人間だからだ。

君はバスタオルを取って全裸になると、壁にかけてある大きな姿見の前で膝をついた。
仮性包茎のペニスは既に硬直を始めていて、亀頭の殆どが露出している。
しかしその部分は普段、外気に触れていないので、まるで赤ちゃんの頬のようなピンク色だ。
君はベッドのマットレスの下に手を突っ込み、そこから一枚の薄い布を取り出す。
それは生セラで買った女性の使用済み下着だ。
君はそれを頭に被ると、ちょうどクロッチの部分が鼻に当たるように位置を調節する。

鏡に、おぞましい独身男の姿が映る。
君は、鏡の前で行う自慰が好きだ。
とても興奮する。
女性のパンツを被って鏡の前で跪いているその状況に、君は酔い痴れ、その倒錯した喜びに溺れていく。
もう何度となく使用しているので、その下着に香りはほとんどないが、それでも、とうてい人前で晒すことなど出来はしない、その異常な自分の姿を鏡で確認するだけで変態の君はたちまち昂ってくる。

電気スタンドの明かりで増幅された君の巨大な影が壁に映っている。
君は、怒張しているペニスを握ると、ゆっくりと自慰を開始した。
その動きに合わせて、壁に映った巨大な影が揺れる。

独身男の暗い寝室。
最初は控えめだった淫靡な息遣いが、徐々に大胆になっていく。

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